痛風

高尿酸血症

診断  原因  治療

痛風とは血中の尿酸という物質の濃度が高くなり(高尿酸血症)、関節内に結晶となって析出し、それが原因で関節炎を来す疾患の事です。関節内の結晶を白血球が貪食し、急性の炎症を引き起こすため、激烈な関節痛を起こします。「風が当たっても痛い」程の痛みを来す事から「痛風」と名付けられたとも言われています。ほとんどは成人以降の男性に見られます。関節炎の好発部位は足の親指の付け根(母趾MP関節)ですが、それ以外の関節(膝や足首など)や、アキレス腱付着部などの関節以外のところにも炎症が見られる事があります。 一昔前までは「贅沢病」と言われていました。理由は昔、栄養価の高い食事を取れる階級の人たちを中心に見られていたからで、「帝王病」とも呼ばれていました。しかし、現代はむしろ栄養価の低い食事をしている人の方が少ないので、特に贅沢をしていなくても痛風発作は起こりえますので、「贅沢病」と言う名称は不適当で、むしろ通常の人に見られる生活習慣病として位置づけられています。

痛風発作は血中の尿酸値をコントロールすることで予防出来ます。しかし、痛風の治療の目的は発作の予防ではなく、尿酸値のコントロールにあります。というのも、高尿酸血症を放置すると腎臓が障害され(痛風腎と言います)、透析が必要になり、最終的には命取りとなるからです。近年は尿酸値のコントロールが容易になった事もあり、痛風腎になる人は少ないですが、過去には透析導入の大きな原因の一つでした。痛風発作を来さなければ何も症状はないので、こういった点で糖尿病や高血圧、高脂血症などと同様に考える必要があります。尿酸はプリン体という物質の代謝産物であり、このプリン体の含有の多い食物を控えることが痛風治療の第一歩です。

診断
特に原因がなく、足の親指の付け根に赤みを伴った腫れと激烈な痛みがあれば、ほぼ痛風と考えて間違いないほどです。このような関節炎と高尿酸血症があれば、通常は痛風と診断出来ますが、一回の検査では尿酸値が異常値を示していないときもありますので注意が必要です。特に発作中は尿酸値が低値になる事もあります。また、感染との鑑別が困難な場合も少なくありません。関節液中の尿酸結晶を証明出来れば診断は確実ですが、実際には見つかる事はそれほど多くありません。
原因
糖尿病や高血圧と同様、体質と食生活に大きな影響を受けます。尿酸は細胞の合成に必要な核酸という物質の代謝産物で、プリン体という物質から生成されます。プリン体は食品によってその含有量に大きな違いがあります。代表的なプリン体含有が多い食品としてはビール、肝類などに特に多く含まれているとされます。最近、恐竜のチラノザウルスの化石にも痛風の痕跡があったという報告がありましたが、やはり肉食が原因だったのでしょうか?
治療

・運動・・・適度な運動が勧められます。高尿酸血症の人は高率に高脂血症などの異常も合併していることが多いので、これらの治療にも役立ちます。

・水分摂取・・・水分を充分にとり、充分量の尿量を確保することが大事です。理由は、尿酸排泄が多くなると尿管結石が生じる可能性が高くなるため、尿量を保って結石を起こしにくくするのです。また、脱水は血中尿酸値を高めることになるので、痛風発作の誘因になります。夏場の運動(特にゴルフなど)は充分に水分をとるように心がけましょう。

・食事療法・・・軽症の高尿酸血症ならば、プリン体含有の少ない食生活にすることでコントロール出来ることがあります。しかし、近年では食事でコントロールできるのは尿酸値にしてせいぜい1前後であると言われています。従って、9とか10あるような場合には食事だけでのコントロールは辛いばかりでなく、無理に近いので、薬物療法によってコントロールすることが望ましいとされます。

・薬物治療・・・尿酸排泄を促進するタイプと尿酸の合成を阻害するタイプと、2種類あります。高尿酸血症の原因が「尿酸排泄が悪いタイプ」なのか、「尿酸産生が過剰なタイプ」なのかを判断して薬の種類を決めます。糖尿病などと同様、体質的な問題が大きいので、基本的に治癒すると言うことは余り無いため、薬は長期間にわたって継続する必要があります。しかし、体質や食生活の変化によって自然と尿酸値が下がってくることもあります。特に高脂血症のコントロールを行うと尿酸値も改善することがわかっていますので、必ずしも一生涯薬を飲み続けなければならないと言うものでもありません。また、痛風発作は尿酸値が高いときに起こるのではなく、尿酸値が変動しても生じるので、薬を飲んだり飲まなかったりすると、痛風発作の原因となります。そのため、発作が起きたからと言って止めていた薬を再開したり、飲んでいた薬を止めてしまうこともよくありません。発作中に尿酸値を下げる薬を開始すると尿酸値が急激に変化するため、発作が悪化したり、長引いたりすることがありますので注意が必要です。

・尿のアルカリ化・・・尿酸結石はアルカリ尿で溶けやすくなるので、尿をアルカリ化すると尿酸結石が起こりにくくなります。牛乳、野菜、海草の摂取などがよいとされます。通常は尿酸値を下げる薬と一緒に尿をアルカリ化する薬も併用することが多いです。

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