変形性股関節症

正常股関節
正常股関節
初期関節症末期関節症
初期股関節症
骨嚢腫が見られる。
末期股関節症
骨頭の変形が見られる。

股関節は体の中で最大の関節です。球関節といって、ボール状の大腿骨頭が臼蓋という骨盤のくぼみにはまりこんでいる関節です。球関節の特徴は可動性が大きいことです。大腿骨骨頭の少し下の部分は頚部といい、少し曲がっています。これはレバーアームを生み出すために有効な構造となっています。頚部の外側には大転子という骨の出っ張りがあり、そこに中殿筋という筋肉が付着しています。この中殿筋は片足で立ったときに骨盤を支持する重要な役割を持っており、この筋肉が弱ると片足立ちしたときに骨盤の反対側が下がり、バランスを崩します。そのため、身体を起立側に傾ける必要が生じます。この歩行形態をトレンデレンブルグ(Trendelenburg)歩行といいます。

股関節の軟骨がすり減った状態を変形性股関節症と言います。明らかな原因がなく股関節症を起こしたものを原発性股関節症と言いますが、これに対して何らかの原因があって股関節症を来したものを続発性股関節症と言います。我が国では臼蓋形成不全と言って、骨盤側の臼蓋が生まれつき(あるいは成長とともに)浅くなっていることが原因で、それにより骨頭にかかる負担が大きくなったために軟骨が傷んで起こるものが多く、全股関節症の約7,8割を占めているとされます。臼蓋形成不全の多くは乳児期の先天性股関節脱臼の既往があります。30年ほど前から先天性股関節脱臼の発生頻度は低下してきていますので、将来的にはもう少し減少するかも知れません、臼蓋形成不全に対する予防や乳児期の治療によって将来的な変形性関節症への以降を減らすことが出来ればよいのでしょう。

レントゲン上は関節裂隙の狭小化、骨嚢腫、骨棘形成、軟骨下骨の骨硬化像など、一般的な変形性関節症と同様の変化が見られます(図の下段2例はともに臼蓋形成不全があります)。

変形性関節症の治療

人工股関節 原則的には手術治療となります。股関節は負荷が大きい上に深部にありますので、注射や運動療法単独では難しいからです。しかし、中殿筋筋力増強を中心とした運動療法は症状緩和に役立ちますので有効な方法ではあります。 手術治療は年齢と関節の状態によって適応が分けられます。
関節軟骨の損傷がまだ少なく、臼蓋形成不全だけの場合であれば、将来的な変形性関節症への以降を予防するために臼蓋の形を造り替える手術が行われます。臼蓋回転骨切り(RAO)と言われる方法や骨盤骨切り(Ganz法, Tonnis法, Steel法)と言われる方法がそれに当たります。この方法であれば臼蓋の硝子軟骨を荷重部に利用できるので長期的な関節の安定が望めます。痛みだけを取る方法であれば、関節鏡による関節内の掃除が有効なことあります。
臼蓋形成不全があり、関節軟骨の摩耗や骨頭の変形が見られていれば、臼蓋形成術とか大腿骨骨切りと言われる方法が適応されることがあります。臼蓋形成術は臼蓋の上に骨の出っ張りを作り、荷重面を増やす方法です(Shelf法)。骨盤を切って、ずらせることによって荷重面を増やす方法もあります(Chiari法)。ただ、この方法では硝子軟骨ではなく、線維軟骨で荷重を受けることになりますので、長期的には関節症の再発が見られることがあります。
大腿骨側を動かす方法もあり、これは骨頭の軟骨状態によって方法が変わりますが、主に内反骨きりと外反骨切りとに分けられます。骨盤側の処置と併用されることもあります。 乳児期の脱臼が残っている場合や、年齢によっては人工関節置換の適応となります。人工関節は特に故障していない限りは何十年でも使い続けて支障ないのですが、体内異物であり、器械ですのでいずれは壊れるか、骨との接合面が緩んできてぐらつきが生じます。
人工股関節の場合、耐用年数は平均的に15年から20年とされています。平均ですので数年で壊れることもあります。耐用年数は骨の条件や使用条件、年齢によって変わるとされます。若年で活動性が高いと早期にゆるみが生じるとされます。緩んだり壊れた人工関節は交換が必要です。再手術です。再手術を繰り返すと骨が弱くなり、再置換が困難になっていきます。ですから一生の内に、再置換を行わない、またはせいぜい1回で済ますのが理想です。このような理由から、人工股関節の適応年齢はおよそ60歳以降とされます。症状が強い場合にはこの限りではありませんが、前述の様な晩期合併症を十分に承知の上で行う必要があります。

人工関節の合併症

手術に付き物の合併症として感染があります。人工関節の場合。大きな異物を入れる事になるので、一般的な手術よりも若干感染の確率が高まります。通常、人工関節手術はクリーンルームと言って普通の手術室よりも空気のきれいな部屋で行います。それでも感染率は通常の手術よりもやや高く、1から3%程度とされています。感染が起こると人工関節を抜去する必要が出たり、場合によっては完治しないことがあります。他には最近よく言われている深部静脈血栓があります。股関節手術はその頻度が比較的高いとされています。脱臼は比較的よく見られるものですが、一度脱臼してしまうと道が出来てしまい、再置換しないと再脱臼を繰り返すことがあります。脱臼をしないように日常生活で注意する必要があります。

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