突き指について突き指と思っていても骨折のことが
俗に突き指と言いますが、実際には突いた事よりもその衝撃で関節がねじれたり、過伸展と言って、過度に伸ばされたりして生じる捻挫のことです。通常は腫れを伴いますが、腫れると言うことは、組織の損傷が生じていることですので、基本的には局所の安静が必要ですし、引っ張るという行為は損傷を強めることにもなりかねません。引っ張る事によって治療されうるのは単純な脱臼の場合だけです。正確な診断がなされるまでは決して引っ張ってはいけません。中には骨折を伴うものもあり、外見と症状だけでは判断できないこともあり、また、放置すると関節機能に障害を来すこともあります。適切な診断のもとに治療を行うべきです。以下に代表的な突き指損傷を挙げます。 突き指と言うよりも、指をはさんだり、ドアに詰めたりしたときによく見られるけがです。爪の下に血が溜まり、爪が青黒く変色します。爪下の神経は敏感なため、少量の出血でも刺激が強いので激痛となることが多いです。末節骨といって、爪の下の骨(末節骨)が骨折していることがよくあります。しかし、爪さえしっかりとしていれば、爪が添え木代わりになってくれますので、保護程度の固定で充分なことが多いです。末節骨の粉砕程度が強いと痛みを残すことがありますが、通常は機能障害を残すことは少ないです。痛みが強い急性期には爪に穴をあけて血を出してやると痛みがかなり軽減されます。適切な主義を使えば麻酔なしでほとんど痛みなく穴をあけられますので、痛みが強い場合には早めに整形外科を受診してください。
(2)槌指(つちゆび、mallet finger:マレットフィンガー) 字のごとく、槌のように第1関節(DIP関節)が曲がってしまう状態のことです。放置すると骨折部がつかなかったり(偽関節)、曲がったままになり、二次的に第二関節にも機能障害を来すこともあります。これには骨折を伴うもの(骨性マレット)と、骨折を伴わずに腱が切れてしまうもの(腱性マレット)とがあります。骨折を伴うもので、適合が悪い場合には手術が必要です。局所麻酔で行えます。骨折を伴わないものでは、骨折を伴うものよりも治癒率が下がります。骨よりも腱の方がくっつきにくいからです。手術なしで治療した場合、約6週間の固定が必要です。突き指後、第1関節が伸びきらない場合にはこのケガを考える必要があります。 これも比較的多いケガです。掌側板という第2関節(PIP関節)の屈曲側についている軟骨の損傷です。バスケットなど、比較的大きなボールによって指が過伸展されたときの突き指で生じることが多いです。小さな剥離骨折を伴うこともあります。骨折を伴うと右図のようになりますが、骨折を伴わない場合もあります。単なる突き指と思われて放置されやすいケガです。しっかりと治さないと指が充分に曲がらなくなる事があります。 突き指の代表です。関節が本来の方向以外に動いてしまわないようにしている靭帯が損傷する状態です。第1関節の靭帯が損傷することは少なく、ほとんどが第2関節の損傷です。特に親指側の靭帯(橈側側副靭帯)が不全治癒すると、ものをつまむときの痛みがのこるため、機能的に問題が生じることがあります。これも初期治療が大切になります。
通常は上記のような関節近傍のケガが多いのですが、関節ではないところに腫れと強い痛みがある場合には指の骨(指骨)の骨折を考える必要があります。時に指の骨には内軟骨腫という良性腫瘍が出来ることがあり、このような場合には、ボールを受けると言ったような軽いケガで骨折を起こすこともあります。子どもさんの場合には骨膜という膜がしっかりしているため、骨折していてもそれ程重症感のないこともありますが、ある程度痛みや腫れがあるときには整形外科を受診しましょう。 まれですが、スポーツ外傷の一つで、ラグビーなどで指が相手のジャージに引っかかったまま強く引っ張られることによって起こりやすいとされる、指の屈筋腱が断裂するケガです。指が引っ張られた後にグーをしても第1関節が曲がりきらないときにはこのケガを考える必要があります。薬指にもっとも多く、その理由は指を途中まで曲げた状態では、薬指がもっとも長くなり、引っかかりやすくなるためと言われています。通常は手術が必要です。 特殊な脱臼として、親指の付け根の関節(MP関節)の脱臼があります。これは外見上、それ程強い変形を来さず、曲がりにくくなると言った症状であることが多いため、脱臼と思われないことも多いものです。よく見ると関節が反った状態(過伸展)になっています。これは上に書いた掌側板という軟骨が関節内に陥入するため、関節が伸びた状態で固定されているもので、MP関節ロッキングと言われます。これは通常の脱臼のように引っ張るだけでは整復されません。押し込むようにする、特殊な整復方法でないと整復できません。また、腫れている場合には上記(4)番の側副靭帯損傷であることがあります。怪我もないのに曲げ伸ばしがしにくい、と言う場合はバネ指(腱鞘炎)であることが多いです。 時に脱臼骨折や顆部骨折という骨折を来すことがあります。これらは指のけがとしては重傷であり、後遺障害を残しやすく、できるだけ早期に適切な治療を行う必要があります。通常は手術が必要になります。後遺症として関節可動域制限を残すことも多いです。 |
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