ダイエットと筋肉

正しいダイエットのために

部分やせについて絶食ダイエットの危険性

皮下脂肪は体の非常食です。食事で得られた余分なエネルギーは非常食として皮下脂肪に貯えられるのです。自然界にはたくさんの動物がいますが、肥満状態になるのはヒトと家畜動物、ペットだけだそうです。野生動物は過剰なエネルギーを摂取しにくい環境にあることもあり、肥満にならないそうです。人が太る根本原因は豊かな生活環境にあるといえます。

皮下脂肪をためるのは動物が生きていく上で必要な身体機能な訳です。ですから、皮下脂肪が付くというのは、決して異常なことではなく、食生活の結果です。しかし、どんどん太っていくわけにもいかない。では、どうすればよいのか。それには、生物がなぜ皮下脂肪をためるのかという根本原理を理解すればよいのです。

基礎代謝という言葉をよく聞くと思います。脂肪が溜まるのは先にも書いたように摂取エネルギーに「余裕がある」からなのです。この時に重要なのが基礎代謝です。これは生きていく上で必ず消費するエネルギーと考えても差し支えありません。呼吸するため、心臓を動かすため、などに使われるエネルギーですので、寝ている間にも消費しています。この基礎代謝が落ちると当然、消費エネルギーが減りますので、余分なエネルギーが貯えられやすくなるというのは容易に想像がつくところです。年齢と共にこの基礎代謝は落ちてきますので、歳と共に太りやすくなるのです。

ですから、ダイエットの基本はありきたりですが「基礎代謝を高めてエネルギーが過剰になりにくくすること」と「必要以上の過剰なエネルギーを摂取しないこと」につきます。これを無視して減量や特殊な食事でダイエットを行うと長続きしないとか、中断によるリバウンドなどが生じるわけです。摂取量については「必要以上の」という部分が最も重要です。単に摂取量を減らすだけのダイエットであると、後に書きますが、栄養障害による様々な身体的不調が出現することになります。基礎代謝に用いる最低限のエネルギー摂取は必要です。野生動物を見れば判ります。適度に食事をとりますが、必要以上にはとりません。運動も良く行います。ですから彼らは太らないのです。それでいてお金をかけずにスマートな体と健康を維持しています。例え食事回数を減らすとしても、炭水化物や脂質を含め、バランスの取れた食事は最低限必要な訳です。体をこわせばやせるかも知れませんが、目標とする体ではないはずです。「健康であること」この前提なしには始まりません。お金をかけるペットが太って、お金のかからない野生動物は太らない。やせるのに本来はお金をかける必要はないはずなんですよね。

よく部分やせという言葉を耳にしますが、科学的にはどうなのでしょうか。

本来体脂肪とは、生体が飢餓状態になった場合を想定して、体内に余剰な栄養分を体の「非常食」として貯蔵しようとする、生命維持のための防御機構としての結果の産物です。脂肪からは糖分の約2倍以上のエネルギーが産生でき、効率の良い燃料です。ですから、体にとっての非常食である脂肪は、そう簡単には消費されないのです。脂肪組織を減少させるには体内でいわゆる「燃焼」させる事が必要です。酸素を利用して脂肪分子を化学的に分解して、その際に生じたエネルギーを利用して、生命活動に利用するのです。体脂肪はそのままではエネルギーとして消費される事はありません。脂肪酸として血中に遊離し、それを細胞が取り込み、エネルギー産生回路に取り込まれて消費されるのです。ですから、全身の脂肪が一様に脂肪酸となって血中に出てから利用されます(内臓脂肪と皮下脂肪では組成に若干の違いがあり、脂肪酸としての利用されやすさに違いはあるようですが)ので、局所の運動によって、局所の脂肪のみが優先的に利用されるという事はありません。さらに、局所を揺らす、部分的に汗をかかせる、局所を暖める、等の方法は論外です。「燃焼」という言葉が誤解を生んでいる原因だと思いますが、ここで言う「燃焼」とは「熱産生」ではなく、筋肉を動かしたりする「エネルギーを産生させる化学反応(酸化)」のことです。ですから、局所を暖めるとか、局所に汗をかくと局所の脂肪を燃焼させていると思うのは間違いであります。局所の細胞の消費エネルギーが増えているだけであり、それに用いられているエネルギー源(糖、脂肪)は全身から血液を介してまんべんなく集められているのです。結論としては脂肪を落とすと言う意味での部分やせは期待出来ないはずです。体全体としての消費エネルギーの大小が脂肪の消費量にも影響するのですから、局所の運動よりも全身運動の方が消費エネルギーと言う点では有利でしょう。

絶食によるダイエットの危険性

適度な減量によるダイエットは推奨されるべきものですが、世の中には極度の減量によるものがよく提示されています。例えば、絶食による場合、体はどんどん体内に蓄積したエネルギーを消費しますので、確かにやせます。しかし、筋肉の維持に必要な栄養分も制限してしまうと、同時に筋肉もやせていきます。筋肉は体の基礎代謝の重要な部分を占めます。運動をしなくても筋肉があるだけで自動車のアイドリングのように、一定量のエネルギーを消費しています。従って、筋量が減ると基礎代謝も下がるという事です。従って、絶食を終えて再度食事を取り出すと基礎代謝が落ちている分、太りやすい体質になっているのです。これがいわゆるリバウンドというやつです。また、極度の栄養制限によるものも危険が伴います。脂肪分を減らすならまだしも、炭水化物まで減らす様な内容がよく言われますが、これは非常に危険です。脳が必要とするエネルギーは1日の必要栄養量の約40%とされていますが、脳が利用出来るエネルギーはブドウ糖のみです。脂肪分はエネルギーとして利用出来ないのです。従って、炭水化物をとらないと、脳が栄養不足に陥ります。脳が栄養不足に陥ると、頭の回転が鈍るどころか、うつ状態に陥ったり、最悪の場合、神経回路に支障を来し、精神障害が生じる事さえありえます。過食症や拒食症などは身体が欲すべきエネルギー摂取を無理矢理抑制したが故の神経回路の故障ともとれます。最低限、脳が利用すべきエネルギーは炭水化物として摂取しておく必要があります。また、思春期の女性には、子供を産めるように体内に皮下脂肪を貯えようとする反応が起きます。これには女性ホルモンが大きく関与します。これは正常の反応ですので、この時に皮下脂肪を付けないために過剰なダイエットを行ったりすると女性ホルモンのバランスが崩れ、月経不順になることがあります。皮下脂肪が極端に少ないスポーツ選手のほとんどは月経異常を伴っていると言われています。体の正常反応である以上、多少は許容する必要があります。 結論的には、適度な運動を行い、エネルギー消費と筋量の維持を心がけ、充分量のエネルギーを摂取した上で、余分なエネルギーを制限し、健康な体の状態を維持していくことが重要です。何も特別なことはいらないのです。健康体であることが結果的に最良のダイエット法なのです。お金をかけて不自然なことをしても無駄が多いのです。「学問に王道なし」と同様、「ダイエットに王道なし」です。みなさん、まがい物の商品に惑わされて悪徳商法の懐を太らせることなく、地道に頑張りましょう。




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