肘内障

子供の腕が抜けた??

ほとんどは乳児から4,5歳頃までにおこります。原因として最も多いものは”手をつないでいたところ、子供がこけそうになったので手を引き上げたら、それから手を動かさない”、”手を持ってぶら下がったりぐるぐる回って遊んでいたら、その後から手を動かさなくなった”、と言うようなもので、よく肩や肘がはずれたのではないか、と心配されて、夜中でも救急で受診されることがあります。このような場合、話を聞くだけで肘内障であろうという見当がつきます。

英語では”pulled elbow(引っ張られた肘)”と呼ばれるように、肘を引っ張られたことが主な原因です。子供同士が遊んでいたのではっきりと原因がわからない、とか、寝返りをうってから、とか言う軽い捻挫が原因の場合もあります。大切なのは、転んだり、転落したりと言う、比較的大きなけががなかったということと、肘を痛がるが、腫れていないというような、骨折との鑑別です(乳児の関節腫脹は医者でもわかりにくい場合もありますが)。ふつうは病変部を触るといやがることが多いのでどこが悪いのかの判断材料になります(通常、痛いところは診察の最後にさわります。そうしないと泣いてしまい、診察が出来なくなるからです)。

肘内障であれば、大抵はその場で、うまくいけば2,3秒で治すことができます。ギプスなどの固定も通常はいりません。治ってしまえば、少し不安がってすぐに使いたがらないお子さんもおられますが、ほとんどの場合、直後から手を使えるようになり、何ごともなかったかのように機嫌がよくなる事もあります。すぐに治せることができるので、整形外科医が大変ありがたがられる数少ない病態の一つです。ただ、時々整復できないことや骨折との鑑別ができずにレントゲンが必要になることがあります。

どのようになっているかですが、肘関節は上腕骨、橈骨、尺骨という3つの骨から構成されています。この橈骨という骨の端に輪状靭帯という靭帯が首輪のようにして巻き付いています。肘内障とは、この靭帯を橈骨の端がすり抜けるようにして靭帯がずれてしまっている状態であると言われています。厳密には脱臼とは少し違いますが、脱臼と思っておられる方も(医者も含めて)多いようです。5歳を過ぎると靭帯の部分に骨のくびれが生じて安定してくるので、この年齢以降には肘内障は起こりにくくなると言われています。

手を動かさなくなった、使わなくなった、と言う場合、時々親の知らないところで起こった骨折(鎖骨や手首など)の場合もあるので充分注意が必要です。




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