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自家矯正

骨には形を造り替える能力がある

骨には、自家矯正能力(リモデリング)と言う力があります。骨を生理的に適合する形に作り替えていく能力です。すなわち、曲がっている骨を力学的要請に応じてまっすぐに、或いはその逆に適度な曲がり具合になるように作り替えていくのです。

これは成人後もないわけではないのですが、非常にゆっくりなため、認識するには長期を要します。 子供の場合は成長のために骨を作り替えるスピードが非常に速いため、早ければ半年程度でこの能力を見る事ができます。 一番顕著なのが骨折後です。

ここに鎖骨骨折で見られたリモデリングの様子を掲載します。

鎖骨骨折
図1
鎖骨骨折2ヵ月
図2
鎖骨骨折半年
図3

当初、骨折部は、ずれており、このままでくっつくのだろうかとも思うような状態です(図1)。しかし、図2では骨がくっつき初めております。骨折部のずれはそのままですが、角が取れてきているのがわかると思います。図3では角がほとんどなくなり、かなりまっすぐになっているのがわかると思います。ここまで約半年でした。 この能力は成人以降でかなり弱くなりますので、逆に言うと、年齢が小さいほどこの能力は大きい事になります。また、成長に伴ってリモデリングしてゆくので、残りの成長期間が長いほどリモデリングしやすいという事も言えます。これが年齢によるリモデリング能力の違いです。場所にもよりますが、8,9歳まではこの能力は比較的旺盛です。

骨折の場所によってもリモデリングのしやすさは違ってきます。もっともリモデリングが顕著な場所として、上腕骨近位部(腕の付け根付近)があります。この部位であると、大体8,9歳までなら約30から40度骨が曲がったままくっついてもまっすぐになると言われています。大腿骨などの場合であれば角度としては10度から20度程度ですが、骨1本分程度のずれなら問題なくまっすぐになります。こういった違いは骨の局所的な成長能力の違いと骨に対する力のかかり方(力学的要請度)によって起こってきます。

写真に示したのは9歳の男の子ですので、まだまだ成長能力は旺盛です。鎖骨の場合、これは思春期頃でも十分に見られます。 ただ、前述したように、リモデリングが起こりやすい部位とそうでない部位があり、年齢によっても異なってきます。従って、骨折部位と年齢、性別、成長の個人差などを考慮して治療に当たる必要があります。また、子供であれば曲がってくっついても良いというものではなく、これらの要素を総合的に判断して、最小限度の治療で治るように導いてあげる事が重要と考えています。

私がよく読む教科書にこのような言葉があります。「The "art" of orthopaedics lies in "knowing" the limits of an acceptable reduction」。これは小児整形外科の教科書である「Tachdjian's Pediatric Orthopaedics」に記載されている言葉です。どこまで整復してやればよいのか、その限界を知ることが整形外科の"art"である、というのです。要は、自然治癒力を十分に知り、その上で最小限度の手助けによって最大限の治癒能力を引き出す、と言うことです。これは自然治癒力の旺盛な子どもにおいては特に強調されるべき事柄なのですが、整形外科、いや、医療全般における「art」だと思いますし、自分の信念でもあります。

参考文献
Herring JA, Tachdjian's Pediatric Orthopaedics. 3rd ed. p 2237. Saunders, Philadelphia, 2002.


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