O脚・X脚


O脚とは定義上はお皿の骨を真正面に向けた状態でレントゲン撮影を行い、大腿骨と脛骨のなす角度を測って診断します。この角度は膝外側角と言って、176度程度であり、軽度のX脚を呈しています。この数値よりも外反角が大きい場合にO脚となり、小さい場合をX脚と診断します。厳密には足をそろえたときに膝の内側がくっつくかどうかはO脚の判断基準ではありません。

下肢アライメントとバランス
(左)下肢が軽度X脚。バランスが取りやすい。
(中)下肢がまっすぐ。少し体重移動が必要。
(右)O脚。上体の移動が必要。
人の足がX脚である理由は2本足で歩くに際して、片足立ちになるとき、足が重心の真下近くにある方が歩行が安定するからです。O脚になると足が重心から遠ざかるために身体を左右に振らなければうまくバランスを取ることが出来なくなります。O脚の人が身体を左右に振って歩くのはこのためです。

このX脚ですが、これは生まれてからずっとあるわけではありません。赤ちゃんは通常、O脚です。赤ちゃんにX脚が見られた場合、何らかの疾患の存在を疑わなければなりません。赤ちゃんのO脚のように、病的なものではないものを生理的O脚と言います。このO脚は通常、歩行開始後1年程度続きます。すなわち、大体2歳頃まではO脚と言うことになります。その後、X脚へと近づいていきますが、一旦X脚が強くなる時期があります。これは4,5歳の頃で、少しX脚が目立つことがあります。その後、2,3年かけて大人のようなX脚になっていきます。
O脚1歳半 O脚2歳半 O脚5歳
1歳半2歳半5歳時

これは以外と知られいていないことで、立ちはじめの頃にO脚が目立ち、周囲の人やご両親が、O脚がきついのではないかと心配して病院につれてこられることがあります。 もちろん程度がありますので、正常範囲を超えたO脚は経過観察が必要です。というのも、O脚が進行する病気があるからです。それはブラウント病(Brount病)といい、脛骨近位部の内側の成長が悪く、徐々にO脚が進行していくものです。進行がゆるくなっても、正常範囲を超えたO脚が残ってしまうと治療が必要になります。治療は骨の変形ですので、基本的には手術になります。病的なO脚でなければ右の写真のように多少正常範囲を超えていても、何も治療せずに経過を見ているだけで年齢とともに改善してくることがほとんどです。装具療法については、装具するのと経過観察のみのものとで大して差はないと言う意見もあり、絶対的な適応は少ないと思われます。

他にも思春期脛骨内反症という、思春期以降に徐々にO脚が目立ってくるものもあります。また、くる病に代表される骨の栄養障害でもO脚は出現することがあります。後に述べるような見た目のO脚ではなく、本当のO脚があるのなら、一度整形外科で検査してもらう必要があります。成人以降に出てくるものでは年齢的な変化としてO脚が出てくることがあります。これは変形性関節症と言って、通常は40から50歳以降ですが、軟骨がすり減ると同時に、膝関節の内側の負担が増えることで内反変形が少しずつ出てくるものです。

残念ながら今のところ、装具で矯正したり、体操で矯正したりしてO脚を治すことは不可能とされています。骨の柔らかい子供ですら矯正は無理ですので、成人ではなおさらです。ただ、O脚と思いこんでいる人で上記のようにきちんと検査をするとO脚ではないことが判明することがよくあります。いわゆる見た目のO脚です。なぜO脚に見えるのかというと、それは股関節の向きが悪くなっているからです。すなわち、お皿がまっすぐ前を向いていないのです。このような人たちは股関節の向きを調整する(お皿の骨がまっすぐ前を向くような正しい姿勢にする)と、見た目のO脚は改善します。もともと骨の変形がないのですから、向きを正しくしてやると正常に戻るのは当然です。


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