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付着部炎とスポーツ障害

整形外科でよく見かける疾患概念として「付着部炎」と言うものがあります。聞き慣れないと思いますが、良くあるものです。一種の使い痛みとして症状が出ることもあれば、リウマチなどの疾患の一症状として出現することもあります。どのようなものかというと、その字のごとく、付着部に起こる炎症なのですが、何の付着部かというと、一般には腱です。腱というのは筋肉と骨をつなぐ硬い組織であり、筋肉のように伸び縮みしません。腱で有名なのはアキレス腱です。これら腱の付着部は、成長期にはほとんどが軟骨を介して骨とつながっています。専門的にはこの腱の付着部の成長軟骨をアポフィーシス(apophysis)と言います。軟骨は腱や骨よりも機械的強度が弱いために、慢性負荷にさらされると、軟骨に損傷が起こり、炎症を生じます。これが成長期に見られる付着部炎で、多くの成長期に見られるスポーツ障害はこれが原因です。その後、成長が終わると軟骨は骨に置換されますので、このような機械的脆弱部はなくなります。この場合、機械的負荷がかかりやすい部分は組織の移行部、即ち、腱と骨の境目の部分になります。成人以降はこの部分に炎症が起こり、付着部炎となるのです。また、腱は年齢と共に強度が弱くなります。そうすると、慢性的な負荷に対して、腱は微細損傷を繰り返します。体は修復を試みるのですが、損傷が繰り返されると、修復が追い付かないため、損傷と修復のアンバランスが生じ、慢性炎症となって現れます。これが多くの使い痛みによる付着部炎の原因です。ある程度損傷が起こりきって、修復もされ、体が年齢的な強度と負荷に相応すると、これらのアンバランスが解消されるため、時間と共に治癒していきます。多くは半年から一年を要します。以下に代表的な付着部炎を示します。

アキレス腱の付着部は踵にあります。この踵の骨の後ろ側をまたぐようにして、足底腱膜とアキレス腱はつながっています。そのため、体が硬くなる成長期には、踵の後ろ部分に負担がかかりやすくなり、炎症を起こします。成長期にはこの部分には踵の成長軟骨が存在しており、特に機械的な刺激に弱い部分となり、炎症を起こしやすくなります。これがSever病(シーバー病、セーバー病)と言われる成長期に見られる踵のスポーツ障害の一種になります。成長が終わって踵の軟骨が骨に置き換わると、機械的脆弱部が骨ではなく、腱の付着部に移ります。そうなったときに生じるのがアキレス腱周囲炎であり、足底腱膜炎なのです。

膝には膝を伸ばす筋肉である「大腿四頭筋」があります。これは大腿骨前面にあり、お皿の骨(膝蓋骨)に集まり、そこから幅数センチの「膝蓋腱(膝蓋靭帯)」となり、お皿の骨(膝蓋骨)よりも少し下にある骨の出っ張り「脛骨粗面」に付着します。この脛骨粗面と膝蓋骨の周囲は、成長期にはやはり軟骨です。ですので、これらの部分の軟骨が障害され、痛みを引き起こします。脛骨粗面に生じたものを「オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter病)」、膝蓋骨下方に生じたものを「シンディング・ラルセン・ヨハンソン(Sinding-Larsen-Johansson、シンディング・ラーセン・ジョハンソン)病」と言います。これらは成人以降に生じると、膝蓋腱の障害なので「膝蓋腱炎」と言います。また、膝蓋骨の上方に生じた場合、「大腿四頭筋腱炎」と言います。成長期にこの部分に痛みが生じた場合は「分裂膝蓋骨」であることもありますので注意が必要です。このような、膝蓋骨周りの症状はバレーボールやバスケットボール、サッカーなど、ジャンプ動作をよく行う競技に多いため、これらを一括して「Jumper's knee(ジャンパー膝)」と言う呼び方をすることもあります。

「小さく前にならえ」の姿勢で肘を体の横面にくっつけたとき、肘の内側、即ち体に接するところにある出っ張りを「内上顆」といいます。また、外側の対称的な位置にある部分を「外上顆」と言います。内上顆には手首を手のひら側に曲げる筋肉と指を曲げる筋肉がひとまとまりになって付着しています。また、外上顆には対称的に、手首を手の甲側に曲げる筋肉と指を伸ばす筋肉がひとまとまりになって付着してます。ですから、手をよく使うと、これらの部分に負担がかかり、付着部炎を生じます。これが「内上顆炎」と「外上顆炎」です。外上顆炎はテニスで、肩手だけを使ってバックハンドを行うとよく罹患することが知られており、「テニス肘」とも呼ばれています。逆に、内上顆炎は「ゴルフ肘」とも呼ばれます。


これら付着部炎の背景には、使い過ぎという面以外に、先に述べたような腱の脆弱性がありますが、全年齢に共通して言えることとして、筋肉の柔軟性低下があります。筋肉に柔軟性があると、筋肉がショックアブソーバーの役目を担ってくれますので、付着部にかかる負担が減らせるのです。ですから、大人も子供も、日頃からストレッチをしっかりと行うことがこのような疾患にかかりにくくなる秘訣なのです。スポーツ選手は柔軟が大切と言われるゆえんはここにあります。特に思い当たるフシもないのに付着部炎が多発するというような場合には、リウマチの類縁疾患である「血清反応陰性脊椎関節症」という疾患であることがありますので、血液検査など、適切な検査を受ける必要があります。

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