痛みの引かない足首の捻挫

足関節捻挫の鑑別と捻挫後遺症について

足首(足関節)捻挫はスポーツ現場のみならず、日常で非常によく見られる外傷です(足関節捻挫の一般的事項についてはこちらも参照ください)。足関節捻挫の痛みは軽度(1度損傷、いわゆる靭帯が「伸びた」と言う状態)であれば数日から1,2週で引きますが、重度(2度・3度損傷、靭帯断裂)になると1ヵ月以上かかることもあります。しかし、重度の靭帯損傷であっても、初期の固定と治療がしっかりとなされていれば、通常は後遺症として残るものは少ない事が多いのですが、初期治療が正しくても、中には痛みが引かない場合があります。痛みが数ヶ月も続くようであれば、捻挫後遺症として何らかの病的状態が遺残している可能性があります。また、捻挫として考えていたら実は全く違うケガだったと言うこともあります。ここでは足関節捻挫として扱われやすい障害や、後遺症となる病態について記載します。
足関節外側足関節内側
1.前距腓靭帯
2.遠位脛腓結合
3.腓骨筋腱
4.腓骨筋腱・距骨下関節
5.二分靭帯・足根洞
.第5中足骨骨折
7.後脛骨筋腱
8.舟状骨結節(<外脛骨)
9.リスフラン靭帯損傷
 
 
 
これらの詳細については痛みの引かない足首の捻挫(2)

まず、痛みがどこにあるかです。足関節捻挫でおきる靭帯損傷は通常、外側にある前距腓靭帯です。右図(1)の場所(外くるぶし(外果)の前下方)にあり、この靭帯の損傷があると、同部に圧痛があります。また、底屈、内返しと言った動作(足の裏を内側に向けるような動作)で痛みが誘発されます。2度以上の靭帯損傷があると、前距腓靭帯だけでなく、そのすぐ後ろ下にある踵腓靭帯(しょうひじんたい)損傷も伴うことがあり、これらを総称して外側側副靭帯損傷と呼びます。ここまでくると、1,2ヵ月の間、正座など、この靭帯に負担がかかる姿勢で痛みが出ることがあります。靭帯の機能不全があるかどうかはストレス撮影と言って、足首を捻った状態でレントゲンを撮影し、関節の不安定性を確認することがあります。しかし、ストレス撮影は痛みを伴うこともあり、強い負荷をかけてしまうことで靭帯損傷を助長してしまうと言うような意見もあるため、積極的には行わない施設もあります。慣れた医師であれば、ストレス撮影まで行わなくても関節の不安定の程度を診察所見で判断することが出来ます。この外側側副靭帯の機能不全が残存した状態が狭義の足関節捻挫の後遺症で、2本以上の靭帯が損傷された3度損傷の後に見られる事があります。また、治癒しきっていない段階で捻挫を繰り返したり、筋力や靭帯機能が充分に回復していない段階でスポーツ復帰すると機能不全が残りやすくなります。スポーツ活動においては、捻挫の回復期や不安定感が強い場合にはサポーターやテーピングをしておくことが望ましいです。また、足首周辺の筋力とともに固有知覚も充分に回復させる事が再発予防のためには重要です。靭帯機能不全が強く、スポーツ活動や日常生活に支障を来すようであれば、手術治療(靭帯再建術)を考慮します(繰り返す足関節捻挫の項目も参照ください)。

【エバーステップ1】 左図のような支柱付きの足首用のサポーターがあります。ゴムバンドでテーピング代わりにするものです。医療用ではもう少し支柱がしっかりしたのを使うことも多いのですが、それほど不安定性が強くない場合には、左図のようなものも有効かも知れません。回復期や捻挫予防に良いと思います。サポーターにも各種あります


足関節捻挫と考えられていて、治癒傾向に乏しい場合、鑑別すべき障害としては骨軟骨骨折があります。離断性骨軟骨炎と言われる事もあります。これは捻挫した際に距骨の角の軟骨がかけてしまう骨折のことです。早期には認識されないことも多く、また、レントゲンでは分からないことも多いので、3ヵ月以上症状が長引く場合にはMRI検査をしておいたほうがよいと考えています。骨軟骨骨折があると手術的に骨片の摘出または整復固定を行わなければ、関節ネズミとなって健常部分にも障害を引き起こすきっかけとなったり、激痛の原因となることがあります。また、高齢者の場合、アキレス腱断裂を合併していることもあります。このような場合では捻挫が治らないといって数週間の経過の後にアキレス腱断裂が発覚することがあります。当初から切れていたのかどうかはっきりしない部分もありますが、捻挫の痛みが引かない場合に鑑別すべき重要な疾患の一つです。

その他、頻度は少ないのですが、捻挫後遺症として扱われ、後から診断がつくことの多いものを次のページに挙げてみます。

また、足首の捻挫に関しては「足首の靭帯マニュアル」と言うページでも良く解説されています。こちらのページも是非ご覧下さい。



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