この項目では五十肩の治療方法と予後について記載します。
- 治療
- 初期には痛みがあり、腕が上げづらい、と言う症状になります。ひどいときはじっとしていても痛いという事もあります。これは急性期と言って炎症が強い時期ですので、安静と消炎剤(痛み止め)などの使用が必要になります。夜間痛が強いのもこの時期です。この時期は約1から3ヵ月あり、無理な運動はかえって症状を悪化させることになりかねません。
この時期を越すと痛みがましになり、腕が上げにくいという症状が主体になります(拘縮期)。この時期になると温熱療法や運動療法が適応になります。この時期は数ヶ月あります。
これを越すと徐々に可動域が回復してきます(回復期)。この時期は積極的に日常生活動作を再獲得して行く時期ですので、病院に通院するだけでなく、自宅でもリハビリをするつもりでがんばりましょう。
全期間に当てはまりますが、症状が強いときにはヒアルロン酸の関節内(肩峰下滑液包内)注射が行われることがあります。ステロイドの関節内注射も夜間痛に有効ですが、腱板の変性を助長することもあるので、使用には十分な配慮が必要です。サポーターの使用などで寒冷刺激を避けておくことは重要なことです。
少々特殊な方法として、関節内注射の圧力で関節の袋を広げるという方法があります。ジョイントディステンションという方法で、直後から効果が見られることがあります。
- 体操療法
- 先にも書いてあるように、無理な運動はかえって症状を悪化させることになりかねません。しかし、適度な運動を行って、関節が硬くなるのを最小限度にとどめておく事は重要な事です。ここではその主なもので、自宅で自分で出来る運動の仕方を記載します。
1.振り子運動
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この運動は痛みが強く、動きの制限が強いときにも行えます。1キロ程度のそれ程重くない重りを手に持って、体をかがめ、あまり力を入れず、軽く勢いを付けて、その名の通り、振り子の如くぶらぶらと動かします。あまり痛みが強い場合には弱めにして痛みを感じない程度にとどめておくのがポイントです。 |
2.ストレッチ運動
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この運動は少し痛みが和らいで来た頃からはじめます。頭の後ろ、あるいは腰の部分で両手を組みます。腰の後ろで行う場合は、組んだ手を痛くない方の手で上へ引き上げるように力を入れます。頭の後ろで行う場合は、肘を開いて後ろの方に持っていくような感じで力を入れます。後頭部で組みにくい時は首を前に曲げるか、手を頭頂部に置くかするとやりよいです。 |
どちらの運動もあまり力みすぎずに行う事が重要です。ちょっと張るかな、と言う程度で良いので、とにかく、少しでも多くの時間、このような体操を行っておくのがよいのです。
画像協力:中外製薬HP
- 手術治療
- 拘縮がひどい場合や数年にわたる場合などで、日常生活が著しく制限されているような場合には手術治療が選択されることがあります。
手術する前にマニピュレーション(manipulation)といって、麻酔をかけた状態で関節に力を加えて、硬くなった関節を無理矢理動かすという方法がとられることがあります。ケガのあとの拘縮などでは有効なことがありますが、特に高齢者の場合、骨折を起こすことがありますので、注意が必要です。
手術は関節鏡視下手術が主流となっておりますが、一般的に広く普及しているというものではありません。基本的には硬くなった関節包や周辺の靭帯を切離して、関節の動きを取り戻そうというものです。手術後にはそのままですとまた関節が硬くなりますので、リハビリが非常に重要になってきます。
- 予後
- 以前は五十肩では痛くても動かさないとどんどん動かなくなるから、がんばって動かさなければならない、と言われていたのですが、最近では痛みをこらえて動かす事はかえって炎症を助長し、悪化につながる事もあるとして、避けられる傾向にあります。無理に動かさなくても、動かせる範囲でリハビリするだけでも治療期間に変わりはないと言われています。時間経過とともに段々と動きが改善し始め、半年から1年半程度の時間をかけて治っていきますが、糖尿病を合併していると治りにくいと言われています。また、腱板断裂など、他に原因がある場合(厳密には五十肩とは言わないが)も同様に、治りにくかったり、再発しやすくなります。
時に肩手症候群という合併症を来すことがあります。これは五十肩に限らないのですが、肩に痛みを来す疾患の経過中に、手が腫れて指が動かしにくくなることがあります。これは複合性局所疼痛症候群(CRPS)(以前は「反射性交感神経性異栄養症(RSD)」と呼ばれていました)の一種と考えられています。特に痛みを我慢して無理にリハビリを続けると発症することがあります。これを発症すると、有効な治療法がなく、指の拘縮が残ってしまうことがあります。大切なのは、本疾患が発生しても、悪化させないように、無理なリハビリを中止し、もとの痛みを来す状態の改善に全力を挙げることです。ステロイドの内服や、星状神経節ブロック注射が有効なことがあります。
原因をしっかりと調べて、無理せず、ゆっくりとなおしていきましょう。