五十肩(1)

肩関節周囲炎

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五十肩とは、その名の如く、50歳頃によく見られるものですが、30歳でも70歳でも起こりえます。40歳頃に起これば四十肩と言われます。正式な病名としては「肩関節周囲炎」というものがもっともよく使われていますが、肩が凍ったように動かなくなることから英語では「Frozen shoulder(凍結肩)」とも呼ばれる事もあります。

定義上は「明らかな原因がなく、疼痛と可動域制限を伴う状態」とされます。すなわち、肩関節構成要素である腱板の断裂や炎症などがなく、関節リウマチなどの疾患もないのに、肩関節が痛く、関節の動き(可動域)が悪くなる状態の事です。ここで言う動きが悪くなるとは、自分で動かす(自動運動)事だけでなく、力を抜いた状態で他人に動かしてもらう(他動運動)事も出来なくなると言うことです。「凍結肩」と呼ばれるゆえんです。これを「拘縮」と呼び、麻痺や腱板断裂など、運動の力源に障害がある場合との鑑別になります。

よく勘違いされることとして、「肩の痛み」=「五十肩」と捉えられていることもあるようですが、これは違います。動きが悪くなる(拘縮がある)ことが必要条件ですので、痛いだけでは頚椎疾患や腱板断裂などの方を強く疑う必要があります。

原因
原因ははっきりしておりませんが、肩関節は「筋肉の海に浮かんだ関節」とも呼ばれているように、骨の構造よりも、それを支えている靭帯や腱、関節包などのいわゆる軟部組織が機能上、重要な役割を果たしています。これら軟部組織は変性と言って、年齢と共にその強度が落ち、傷みやすくなってきます。そうすると、日常生活動作で組織に損傷が起こり、軽度の炎症を来たし、肩関節が硬くなるのではないかとされています。こういった変性を基盤とした障害が起こりやすくなるのが40歳から50歳くらいなので、この年齢層に生じやすいとされます。

他には、糖尿病や透析患者さんにもよく合併することが知られており、これらの患者さんではなかなか治りにくいことも多いのです。

症状
通常は腕が上がりにくくなるとともに、回旋動作がしにくくなります。この病態は江戸時代にも記述されており、当時から「結髪・結帯」がしにくくなるとされています。すなわち、後頭部や背中に手が届きにくくなるのです。

痛みの場所は肩関節が痛いという事はむしろ少なく、腕の付け根の外側がいたいと言われる事が多いように思います。また、夜間痛と言って、夜、特に痛い方を下にして眠りづらいと言う訴えも多く見られます。ただ、この夜間痛は五十肩に特徴的なものではなく、肩関節疾患の多くに見られるものです。

ちなみに肩周辺に痛みを来す他の疾患(鑑別疾患)としては、頚椎由来の疾患(頚椎症、頚肩腕症候群、頸椎椎間板ヘルニア、など)や五十肩以外の肩関節疾患(腱板断裂、石灰沈着性腱板炎、など)の整形外科疾患もありますが、時に心臓由来の痛み(狭心症、心筋梗塞など)でも肩(特に左肩ですが、右に出ることもあります)や上腕部、肩甲部などに痛みを来すことがあるので注意が必要です。肩関節疾患以外が原因の場合、肩関節可動域が制限されていることは余りありません。




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