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骨も生きている

ウォルフ(Wolff)の法則

 骨という組織は、化石として何千万年も残るくらいだから、形も変えずにいる物だと思われがちですが、骨も生きた組織です。絶えず造り替えを行っています。「ゆく川の流れは絶えずして またもとの同じ水にあらず」という有名な一文がありますが、骨も同じです。全く同じように見えていても、その中身は絶えず造り替えられ、変化していっているのです。

 実際に骨の造り替えのしくみを書きますと、まず、骨を作る細胞というのがあります。これを骨芽細胞と言います。骨芽細胞がカルシウムを沈着させ、硬い骨の組織を作り上げあると、骨芽細胞は活動を停止し、骨細胞というものになります。この骨細胞も生き続けますので、骨も生きているのです。死んだ骨というのは、細胞が死んで、その周りにあるカルシウム成分を主体とした骨組みがのこるだけです。化石などではこの骨組みを見ているに過ぎないのです。

 このように、絶えず骨芽細胞が骨を作る一方で、この骨を壊していく細胞があります。これを破骨細胞と言います。この細胞はできあがったカルシウムの骨格を徐々に溶かしていきます。そして、溶かしたカルシウムはまた新しい骨の形成に使われます。このように、骨芽細胞と破骨細胞とがバランスよく働きあっているために、外見上では骨の形が変わらないように見え、また、弱い部分やいたんだ部分を修復していっているのです。

 では、このバランスが崩れるとどうなるのでしょうか。よく見受けるのが骨芽細胞の働きが弱ってしまう状態です。骨を作る力が弱くなり、相対的に壊す力が上回ってしまい、骨が弱くなっていく病態、そうです、今ではすっかり有名になった骨粗鬆症です。逆に破骨細胞が働かなくなった状態は大理石骨病といいます。レントゲンでは大理石のように真っ白な骨になって写ります。これもガラスがもろいのと同じで、骨折しやすくなります。

 ところで、なぜ生体はこのように一見効率の悪い、作っては壊し作っては壊すというようなシステムを作ったのでしょうか。実は、これは非常に巧妙なしくみでありまして、例えば、金属疲労というものがあります。同じ部分に繰り返し力を加え続けていると、いずれそこが破断してしまうと言うもので、針金などを曲げ伸ばししていると針金がいともたやすく切れてしまう現象です。近年ではジェットコースターの部品が金属疲労によって壊れてしまうというような事故もありました。そこで、生体が選択した方法というのは、絶えず造り替えを行うと言う方法だったのです。絶えず造り替えを行うことによって、いわば絶えず新品を供給し続けるのです。そして、よりいっそう強度が必要と判断される部分には骨を強くしていき、不必要と判断された部位には、必要以上の骨を作らない、と言うシステムにしたのです。このように、骨の力学的要請度に応じて骨の造り替えを行って強度を変えていくと言うことをWolffの法則と言います。例えば、曲がった骨があるとします。そこに体重がかかると、凹側に強い負荷が掛かり、凸側にはあまり力がかかりません。そうすると骨は凹側にたくさん骨を作り、凸側から骨を奪います。その繰り返しを行っていくと、まっすぐな骨ができあがります。まっすぐになると内側と外側にかかる力は均等となるので、一見それ以上形は変わらなくなるのです。造り替えの力を上回る程の損傷が生じていくと、つもりつもって骨折を起こします。これが疲労骨折と呼ばれるものです(疲労骨折についてはこちらを参照してください)。

 このように、骨を作って、壊して、また作って、と言うサイクルのことを骨のターンオーバーと言います。成長期の子どもではこのターンオーバーが速いため、骨の造り替えの速度が大きいので、骨折して多少の変形が残ってもまっすぐになることがあります。逆におかしな力が働き続けると骨が変形してしまうこともあります。それに対して大人の場合はターンオーバーが緩やかになりますので、このような骨の形態変化を見るためには年単位の時間が必要ですが、骨の形態変化は生じ得ます。若い頃はまっすぐの足だったのに、老年になるとO脚になると言うような事実も、こういう骨の形態変化から来ているものなのです。かといって、装具などでO脚の足を縛り付けておいたらO脚が矯正されるかというと、理論上は可能ですが、それを実現するためには、寝るときも歩くときも、絶えず矯正力を加え続けることが必要ですし、なによりもそれ程の力を外から加え続けると、皮膚が障害されてしまいますので、現実的には不可能と言えるでしょう。




 
 
 
 
 
 

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