子供の跛行

子供が足を痛がる、足を引きずって歩く

子供が足を痛がって泣く、足を引きずって歩いているようだ、などの症状が見られた場合、色々な可能性が考えられますが、まずは、痛みがどこにあるのかをさがす必要があります。

子供が足を痛がり、引きずっているような場合、よく見られるのが股関節の疾患です(けがが原因の時は別です)。大人でもそうですが、子供の場合特に、股関節が悪くても股関節が痛いと訴えることは余りありません。7割近くは膝やふともものあたりが痛いと訴えます。そのため、あし(膝のあたり)が痛いと言って診察を受け、膝の精密検査までしてもらったが、いっこうに原因がわからず、股関節を調べるとすぐに原因がわかった、と言うケースも時々見られます。

どのような病気があるのか、ですが、よく見られるのが単純性股関節炎と呼ばれるものです。好発年齢は3,4才から10才までが多く、風邪症状が先行していることも多いようです。一般的に経過はよく、特に治療しなくとも数日から数週間で何ごともなかったかのように元気になります。

同じような年齢層に見られるものとして、ペルテス病というものがあります。これは股関節の部分に血流障害が起こり、骨がつぶれて、結果として関節変形を残すこともある病気です。大抵は治療が必要です。発症のごく初期には単純性股関節炎との鑑別は困難なことも多く、数週間の経過で改善しない場合にはペルテス病を疑う必要があります。

10才を超してくると、ペルテス病もあり得ますが、大腿骨頭すべり症と言って股関節の骨が成長軟骨の部分でずれてしまう病気があります。軽微なけがで起こることもありますが、徐々に起こってくることもあります。太り目のお子さんやスポーツ活動の高い子供などに見られやすいですが、10歳以下に見られることは少ないとされています。

また、化膿性関節炎や、骨腫瘍の鑑別も重要です。これらの疾患は痛みが強い事が多く、関節を動かすとひどく痛がる、とか、ある特定の部位を押さえると強く痛がる、などの症状が見られる事が多いです。また、子供のリウマチのこともあります。これは3,4歳までに発症することもあり、注意が必要です。関節が腫れていることが多いようですが、痛みは比較的軽い事があります。これらの疾患はしっかりした診断と治療が必要ですので、専門医にかかりましょう。

これらのケースでは、診断がつかず、成長痛として片づけられている事がよくあります。子供が正確に病状を訴えられないと言っても、普段から足を引きずったり、歩こうとしないのは何かの原因があることがほとんどです。成長痛と決めつけずに、脊椎から足の先までしっかりと診察する必要がありますので、症状が取れない場合は速やかに専門医に相談しましょう。

よく病院に相談される例として、昼間は痛がらないが、夜になると泣き出すほど足を痛がる、右であったり左であったり、場所も一定していないことが多い、昼間になると何ごともなかったように走り回っている、と言った場合には心因性四肢痛と言われるもののことがあります。これは子供のストレスと考えてもよいでしょう。普通は数時間経ったり、遊びや他のことに気を取られると症状が消失します。新たに妹や弟が出来てお母さんの手が回らないとかいう家庭環境の変化などが原因になっていることも多く、スキンシップのみで改善することもあります。典型的な場合にはお話を聞くだけで診断できるような場合もありますが、実際に診察して異常がないことを確認しておくことをおすすめします。




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