骨折を治すと言うこと(1)


 骨という組織は特殊な組織でして、損傷しても再生して修復される人体でも数少ない組織の一つなのです。

 皮膚の場合、表層の傷なら確かにもとの組織で置き換わって完全に治ります。しかし、真皮に達する傷は完全に修復されることはありません。この場合、瘢痕と呼ばれる結合組織(皮膚とは細胞成分が違います)で間隙が埋められるのです。そのため、皮膚とは違った傷跡が残ります。これがいわゆる”一生傷”というやつです。人体の多くの組織はこのように瘢痕で組織を修復します。

 それに対して、骨という組織は硬いカルシウムの固まりのようでありますが、実は絶えずリサイクルを繰り返しているのです。
 すでにある骨を壊して分解し、それをまた再生して新しい骨を作っているのです。年齢と共に再形成能力が低下していき、このリサイクルのバランスが崩れた状態が骨粗鬆症です。なぜこのようなことを骨粗鬆症のリスクを冒してまで繰り返しているのか?一見無駄に見えますが、非常に理にかなっているのです。

 皆さんは”金属疲労”という言葉を聞かれたことはありますでしょうか?
 これは針金なんかをクニャクニャ同じ場所で曲げたり伸ばしたりしているとある時、ポキッと折れてしまいますよね。このように、本来ならちぎれることのない金属が同じ場所に繰り返し負荷を加えられることによって金属としての連続性が断たれてしまうことを金属疲労と言います。骨を含めて、金属などの硬い物質にはこのような特性があります。

 車などの部品は20年30年使い続けることは滅多にないですよね。しかし、人体の骨は100年歩き続けてもふつうは骨を交換することなく、使い続けることができますよね。ここが骨のすごいところなんです。その理由が先ほどのリサイクルにあるのです。弱ってきている部分があったり、特に負荷のかかりやすいところがあると、リサイクルの際に強度を補強していくのです。こうして負荷のかかるところは強い骨となり、負荷の弱いところはそれほど強い骨ではなくなるのです。たとえば、曲がっている骨があるとその凹側には骨を強くするために分厚い骨となり、凸側では吸収して出っ張りをなくしていきます。成人ではこの作用はゆっくりなため、長年経過しないとこの変化はわかりづらいですが、成長真っ盛りの子供であれば1,2年でこのような変化が目に見えて出てきます。そのため、骨折部位にもよりますが、8,9歳以下の子供であれば、10度程度骨が曲がってくっついてもまっすぐになります。ほんとです。このお話は別のページ(リモデリングの話)で説明していきたいと思います。

 ちょっと話がそれましたが。続きもどうぞ。


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