固有知覚

関節の感覚

「固有知覚」。余り聞き慣れない言葉ではないでしょうか。英語では"proprioception"といいます。最近スポーツ医学界で特に注目されてきているものです。これは関節の位置を認識する感覚で、今関節がどのくらい曲がっているか、どのような方向に力がかかっているか、などを判断するための感覚です。

私たちは通常、特に意識せずにでこぼこ道を歩いたり、頭の上など、目に見えない部分でも何の支障もなしに手や足を思いの場所に移動させる事が出来ます。これらの動作は関節の固有知覚のおかげであり、これらがうまく働かなければバランスが取れなかったり、手が思うところと違った場所に届いたりするのです。

スポーツ界でこれが特に重要視されてきているのは、運動能力との関係です。例えば、これが発達していると、ボールの位置とバットの位置をうまく合わせる事が出来る、すなわち、打撃能力が向上する、といった具合です。そのため、スポーツ障害での復帰のためのリハビリにおいてもこの固有知覚を鍛える事は非常に重要になります。

最近ではこの固有知覚を治療中にいかに劣らせることなく治療できるか、また、リハビリ期にどれだけ早く感覚を取り戻せるか、といった事が注目されています。ある程度確立してきたものとして、足首の捻挫があります。これは以前まで治療にはギプス固定が行われていましたが、ギプスをして長い間関節を固定していると、関節の固有知覚が鈍くなります。そうなるとリハビリに時間がかかり、復帰が遅れます。

しかし、治療に固定は必要ないのでしょうか?

最近の研究では足首の捻挫に関しては、ギプス固定をしなくても多くのものはよく治るという事がわかってきました。その代わりに機能装具といって、足首の機能をあまり制限せずに、なおかつ負担をかけないようにする装具が使用される事があります。腫れや痛みが強い場合は局所の安静のために固定することもあります。体重負荷は以前は体重をかけないようにして歩いていましたが、最近では固定中であっても痛みの許す限り体重をかけていくことが望ましいとされています。リハビリは早期から開始し、バランスを取る訓練や足首周りの筋力訓練を行う事が多いようです。

このように、最近ではギプス固定に変わる治療法でより早く復帰できるような試みがなされています。これは足首に関してですが、今後、他でもこのように治療方法が発達する事を願います。




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