スポーツ傷害

スポーツ外傷とスポーツ障害

近年、健康ブームで、スポーツに対する認識は急速に高まってきています。スポーツは健康増進のためには重要ですが、「過ぎたるは・・」で、やりすぎると健康を阻害する怖れがあります。スポーツは両刃の剣であることを認識する必要があります。こういった障害は競技スポーツ、クラブ活動や社会人クラブ、プロ選手などによく見られます。レクレーションレベルでされている分には起こりにくいですので、それほど心配はありませんが、個人のコンディションによっては十分に起こりうることです。

よく使われる言葉として、「スポーツ傷害」と「スポーツ障害」、「スポーツ外傷」がありますが、違いはお解りでしょうか。スポーツ等の競技によって発生したケガのことはスポーツ外傷と呼ばれます。骨折や脱臼、靭帯損傷などがこれに当たります。それに対して、ケガと言うよりも、いわゆる故障と呼ばれるものをスポーツ障害と呼んでいます。これは、使いすぎ症候群(over-use syndrome)とも言われ、ケガと言うほどの大きな力が働いていない場合や、徐々に痛くなってきたような場合で、微少な外傷の繰り返しによる慢性的な機能障害の事を指します。スポーツ障害が潜在しており、これが原因となって外傷を生じるというような、両者に密接な関連のあることもよくあります(疲労骨折が完全骨折になるというケースもあります)。このスポーツ外傷とスポーツ障害を総称してスポーツ傷害といいます。ここでは、スポーツ障害について触れていきたいと思います。

適切な負荷基本的に、スポーツとか、トレーニングというのは体力の向上が目的の一つです。体力をトレーニングで向上させるには、楽をしていては達成できません。体力の向上のためには、通常は身体機能の持っている能力を上回る負荷を与えます。このような負荷を与えられた組織はそのままでは負荷に耐えられないために、新たに組織を強化しようとします。筋肉であれば、トレーニングで傷んだ筋組織を修復・再生する過程で筋繊維を太くします。心機能ならより多くの血液循環量が保てるように心臓の力が強くなります。このように組織損傷に対する修復をすることでさらなる負荷に耐えられるようになり、身体能力の向上が得られるのです。このように、一旦傷められた、あるいはそれに近い状態に追い込まれた組織が回復する過程で以前の能力を上回るように回復していくということを超回復といいます。
過剰な負荷従って、トレーニングの効果を得るには、それ相応の、修復に要する栄養素と時間が必要であるということに注意する必要があります。すなわち、「バランスの取れた食事・休養もトレーニング」なのです。トレーニングをやりすぎると、修復に要する時間がなくなり、完全に修復される前に、更に傷められるという悪循環が起こります。このように修復能力を上回る負荷がトレーニングで与えられてしまうと使いすぎ症候群となり、スポーツ障害が発生してしまうのです。この負荷と、修復に要する期間は個人によって違います。選手に疲労感が見られたとき、負荷が大きすぎるのか、それとも本人の努力が足りないのかを見極めることは非常に困難なことではありますが、根性理論はメンタル面の強化と言う目的以外には、障害を増やして優秀な選手を壊すことはあっても、たくさんの優秀選手を生み出すことにはならないでしょう。どれだけトレーニングしても壊れないような天才を「発見する」には良い方法かも知れませんが。

このように、スポーツ障害というものはその背景が重要であります。逆に考えると、ある程度の予防対策が可能なのです。ほとんどのスポーツ障害は体力、練習量、十分な休養、の3つのバランスが崩れた状態で生じます。これは個人差、特に成長期においては同じ年齢でも大きな差があります。したがって、個々人でメニューを立てる事が理想なのですが、プロなどの専門的な現場以外では、実際にはなかなか難しいことです。一般レベルとして出来ることは、これらの事柄を考慮して練習に当たることが最も重要でしょう。成長期のトレーニングの注意点についてはこちらで説明します。

最後に、実際にスポーツ障害を起こしてしまった場合についてですが、必要な安静は必ず守るべきですが、必要以上の安静は不要です。上半身の障害ならば下半身を鍛える、などして、障害部位に影響を及ぼさないようなトレーニングや練習を行うのです。個々の症例に応じた具体的な方法などを提示するのが専門医の役割であると考えます。健康増進、技能向上のためのスポーツであり、トレーニングです。障害を起こしてレベルダウンしてしまっては元も子もありません。障害を起こさないようにうまくトレーニングしていくことが重要ですが、起きてしまったら仕方がありません。すこしでも早く復帰できるように努力するしかありません。それには必要な安静を守ることと、適度な練習を続けることの両者が重要です。焦って適切な安静が守れないと、かえって症状が長引き、結局本来の力を出し切れないと言うこともあります。治せるものは休んででも治して、一日でも早く100%の力を出せるようにすることが大事なのではないでしょうか。

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