疲労骨折2症状と診断方法疲労骨折1でも記載したように、これはスポーツ障害の中でも、最も注意を要する疾患の一つです。その病態は「骨折」ですので、侮ってはいけません。が、骨折と言っても一般的な骨折と違い、骨の連続性そのものは保たれていますので、痛みは普通の骨折に比べると、非常に軽度です。軽度の疲労骨折であれば、普通に歩けますし、練習中だけ痛くて、日常生活では痛くないと言うこともあります。重度になると日常生活でも痛みが出てきますが、歩けなくなるほど重症になることは少ないです。ですから、疲労骨折という概念を知らなければ、単なる成長痛として放置してしまい、いつまでも痛みが取れません。そのため、長期にわたり痛みを引きずってスポーツしていかなければなりませんし、中にはある日突然、ボキッと折れてしまうこともあります。ですから、疲労骨折は早く見つけて、完全に成立する前に治してしまうのが復帰への一番の近道なのです。 では、疲労骨折はどうやって見つけるのか。レントゲンは一つの手段ですが、痛みが出てから2,3週は、レントゲンを撮っても見つかりません。先にも書いたように、完全に折れているわけではありませんので、レントゲンには写らないのです。しかし、2,3週もすると、損傷部に骨の修復反応、すなわち、損傷部を中心として、新しい骨(仮骨)が作られ出すのです。この仮骨はうっすらとレントゲンに写ります。この仮骨がレントゲンに写って、初めて疲労骨折があると分かるのです。ですから、症状発生から診断確定までに、最低2,3週は必要であると言うことになります。ただ、近年、MRIや骨シンチという検査によって、早期発見が出来るようになりましたが、侵襲面やコスト面、設備の問題などで、一般的とまでは言えません。
そうすると、画像上で診断を付けるまでは、まったく分からないのでしょうか?画像だけに頼ると、そうなります。しかし、疲労骨折の好発部位を把握しておくと、一足先に予測することが出来ます。それを示したのが、「疲労骨折1」に示した表なのです。このような典型的部位に症状がある場合、成長痛だとか、単なる疲労だとか言ってスポーツを続けていると、いつまでたっても治らず、充分なパフォーマンスが発揮できないと言うことにつながるだけでなく、治癒期間も長くなります。痛みをこらえながらやっていた時期も合わせて考えると、半年から一年を棒に振ってしまうことさえあります。また、場合によっては重症化したり、完全骨折を来たし、手術が必要になることがあります。一方で、早期に診断し、早くから適切な安静を守ることができれば、2ヶ月もあれば100%の力を発揮できるまでに治ることも多いです。適切な安静が守れれば、写真のように、数週間で仮骨は成熟し、骨癒合が得られ、太くなって治癒します。ですから、選手の皆さんは自分の種目と、好発部位をよく把握しておき、また、指導者の方は是非ともこの一覧を覚えておくとよいと思います。繰り返します。疲労骨折に限らず、スポーツ障害全体に言えることですが、疲労骨折は特に早期診断・早期治療が復帰への近道なのです。特に先の一覧にあるような部位に症状が出たら、我慢せず、速やかに整形外科(できればスポーツ医)を受診してチェックしてもらって下さい。 また、この仮骨ができる一連の反応を「外骨膜反応」と言います。骨膜反応の見られる疾患で頻度の高いものは疲労骨折ですが、他にも鑑別すべき疾患があります。まず、第一に鑑別するべきものは、骨肉腫に代表される悪性骨腫瘍です。これは診断が数ヵ月遅れると命取りになります。その他、良性腫瘍や骨髄炎でも骨膜反応を来す場合もあります。これらの鑑別には詳細な病歴聴取と適切な検査・経過観察が必要ですので、典型的な部位に症状があっても、疲労骨折と決めつけず、必ず専門医を受診するようにしましょう。 あと一つ、疲労骨折と鑑別が必要なものにシンスプリントというものがあります。これについてはシンスプリントの項で説明します。
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