子供(小児)の骨折 |
子供の骨折はその特徴が大人とちょっと違います。 まず、骨が柔らかいことによる違いです。大人では肘や肩が脱臼すると言うことは時々耳にしますが、子供の場合、純粋な脱臼は非常に珍しいです。通常脱臼と思われて救急車で運ばれてきても、ほとんどは関節近くでの骨折です。これは特に肘でよく間違われます(特に上腕骨顆上骨折)。ついでに、関節がはずれる、と言う表現がなされているものの中に、肘内障というものがあります。よければ参考にしてください(肘内障のページへ)。なぜ脱臼が少ないのかというと、脱臼させるほどの力を加えると脱臼する前に骨が先に折れてしまうからと考えられています。 大人にはない成長線で骨折が起きることがあり、これを骨端線損傷(骨端線離開)と言います。これは骨よりも軟骨の方が強度的に弱いために、骨の部分でおれずに、成長軟骨の部分でおれることによって生じます。この折れ方にも幾通りかあって、専門的にはソルターハリス(Salter & Harris)と言う分類がよく使われます。これはこの分類方法を考え出した人の名前です。成長軟骨の傷み方で5型に分類されます。3,4,5型は後遺障害が残りやすいとされます。この場合、後遺障害というのは、成長軟骨が傷害されるために起こる成長障害や、関節近傍の事が多いために起こる関節機能障害などをいいます。 また、大腿部(ふともも)や下腿部(すね)の骨折の後に問題となるモノとして、過成長というモノがあります。字のごとく成長が過剰に起きるのです。要するに骨折を起こしていない方に比べて長くなってしまうのです。足が長くなる、とお喜びかも知れませんが、足の長さが変わると歩行に支障を来すのは容易にわかると思います。大体、左右差が2センチを超すと手術治療を考えるべきとされています。一般人でも数ミリの差があることは時々あるようですが、1センチを超すことは少ないようです。2センチを超すと歩行時に身体が揺れるので外見でわかるようになります。過成長による脚長差がどのくらい出るかは計算する方法もあるのですが、原則的には成長が終わる思春期まで様子を見ないとわかりませんので注意が必要です。 このように子供の骨折の場合、成長という問題があるために大人とは違った考え方をする必要があります。上記のように成長途中であるが故に不利な面もあるのですが、逆に、成長途中であるが故に有利な点もあります。それは、骨折が曲がったまま、変形してくっついたとしても、自然にまっすぐになっていくという能力が大きいことです(骨の自家矯正能力(remodel:リモデル))。この、自然に矯正可能な変形の強さは部位や程度、年齢によって変わってきます。自家矯正が多く見られる変形としては、軸転移といって、横方向にずれているだけで、軸そのものは平行に保たれているものです。このような骨の自家矯正能力は、年齢が低いほど矯正能力は大きく、思春期終了とともにこの能力は非常に小さくなってしまいます。 このように、子供の骨折は大人の骨折と違った概念で治療する必要があるのです。
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