子供(小児)の骨折


 子供の骨折はその特徴が大人とちょっと違います。
 まず、骨についてみると、子供の骨は大人よりも柔らかいのです(未熟な骨の成分が多い)。また、成長軟骨と言って、骨の端にレントゲン上、線状に写る部分があります(成長線)。これらの特徴により、大人と違った骨折の特性が出ます。

 まず、骨が柔らかいことによる違いです。大人では肘や肩が脱臼すると言うことは時々耳にしますが、子供の場合、純粋な脱臼は非常に珍しいです。通常脱臼と思われて救急車で運ばれてきても、ほとんどは関節近くでの骨折です。これは特に肘でよく間違われます(特に上腕骨顆上骨折)。ついでに、関節がはずれる、と言う表現がなされているものの中に、肘内障というものがあります。よければ参考にしてください(肘内障のページへ)。なぜ脱臼が少ないのかというと、脱臼させるほどの力を加えると脱臼する前に骨が先に折れてしまうからと考えられています。
 骨が大人のように硬くないために、完全に折れてない状態の骨折で若木骨折と言うものがあります。その名のごとく、若木(乾燥しきっていない枝など)を折ろうとしても、凸側の部分は裂けますが、凹側は連続したままですよね。あれと同じ事が子供の骨で起きるのです。逆に凸側の連続性が保たれたまま、凹側に隆起ができたようになって折れる場合もあり、隆起骨折と言われ、若木骨折の一種です。手首の骨折によく見られます。また、凸側、凹側ともに連続性が保たれたまま、骨がまるでプラスチックを曲げたように曲がることがあります。これを急性塑性変形と言います。英語ではplastic deformityとなり、プラスチックの変形そのままです。軽度の場合、外見上の腫れも少なく、痛みだけが手がかりで、レントゲンでもわからないこともあります。ギプスなどを必要としないようなものから、麻酔をかけて形を戻さないといけないものまで様々です。

 大人にはない成長線で骨折が起きることがあり、これを骨端線損傷(骨端線離開)と言います。骨端線離開これは骨よりも軟骨の方が強度的に弱いために、骨の部分でおれずに、成長軟骨の部分でおれることによって生じます。この折れ方にも幾通りかあって、専門的にはソルターハリス(Salter & Harris)と言う分類がよく使われます。これはこの分類方法を考え出した人の名前です。成長軟骨の傷み方で5型に分類されます。3,4,5型は後遺障害が残りやすいとされます。この場合、後遺障害というのは、成長軟骨が傷害されるために起こる成長障害や、関節近傍の事が多いために起こる関節機能障害などをいいます。
 成長障害とは、もっとも重症の場合、その部分で骨の成長が止まることです。そうすると当然、骨の長さが変わってきます。足の場合、長さの差が2センチ以上になると手術的に矯正する必要があると言われています。
 部分的に成長障害が起こった場合には、例えば、骨の内側だけがふつうに成長し、外側の成長が悪い、と言うようなことが生じます。そうすると、結果とし内側だけがのびてくるので、骨は外側に向けて曲がってきて、骨折はまっすぐ治ったのに成長に伴ってだんだんと骨が曲がってくる、と言うことが生じます。こうなると手術的に骨を矯正してあげなければ治りません。装具やマッサージ、体操など、外からの力だけでは通常、成長する方向を変えることはできません。手術的な矯正方法には曲がった部分を直接まっすぐにする方法と、伸びなくなった成長軟骨の部分を切除して、成長のバランスを整える方法とに大別されます。

 また、大腿部(ふともも)や下腿部(すね)の骨折の後に問題となるモノとして、過成長というモノがあります。字のごとく成長が過剰に起きるのです。要するに骨折を起こしていない方に比べて長くなってしまうのです。足が長くなる、とお喜びかも知れませんが、足の長さが変わると歩行に支障を来すのは容易にわかると思います。大体、左右差が2センチを超すと手術治療を考えるべきとされています。一般人でも数ミリの差があることは時々あるようですが、1センチを超すことは少ないようです。2センチを超すと歩行時に身体が揺れるので外見でわかるようになります。過成長による脚長差がどのくらい出るかは計算する方法もあるのですが、原則的には成長が終わる思春期まで様子を見ないとわかりませんので注意が必要です。

このように子供の骨折の場合、成長という問題があるために大人とは違った考え方をする必要があります。上記のように成長途中であるが故に不利な面もあるのですが、逆に、成長途中であるが故に有利な点もあります。それは、骨折が曲がったまま、変形してくっついたとしても、自然にまっすぐになっていくという能力が大きいことです(骨の自家矯正能力(remodel:リモデル))。この、自然に矯正可能な変形の強さは部位や程度、年齢によって変わってきます。自家矯正が多く見られる変形としては、軸転移といって、横方向にずれているだけで、軸そのものは平行に保たれているものです。このような骨の自家矯正能力は、年齢が低いほど矯正能力は大きく、思春期終了とともにこの能力は非常に小さくなってしまいます。

このように、子供の骨折は大人の骨折と違った概念で治療する必要があるのです。

 
 
 
 
 


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