腱板損傷(1)肩が挙がりにくい病態 肩の深部にある回旋筋腱板(「整形外科:肩関節」の項目参照)という腱性組織の損傷です。腱板の構成は棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つですが、もっとも傷みやすいのが棘上筋腱で、次に棘下筋腱です。肩甲下筋腱も損傷の頻度が今まで認識されていたよりも高いのではないかと近年注目されてきています。損傷の原因は主には加齢変化(変性)であり、そこに軽度な外力でも加わると断裂が生じます。以前まではインピンジメント症候群と言って、繰り返される挙上動作によって骨頭と肩峰の間にある腱板がすり切れ、浮腫、炎症、部分断裂、完全断裂という過程を取って進行すると考えられていました(impingement説)。しかし、最近ではインピンジメントは腱の損傷が起こってから生じる二次的なものであることもあり、断裂の主な原因は変性とそれに伴う腱の強度低下が基礎にあり、そこに繰り返しの牽引力が働く事によって断裂が生じるとする考え方(traction injury説)が主流になっています。
症状
典型的には「転倒して手をついた、肩はぶつけてないのだが、それ以後肩が上がりにくい」と言うエピソードが多いです。はっきりとした原因がなくても自然に断裂してくる事もあり、「以前から五十肩と言われているが、よくなったり悪くなったりを繰り返している」という場合、調べてみると腱板断裂があると言う事もよくあります。 鑑別診断 五十肩、石灰沈着性腱板炎、頚椎疾患などがあります。こちらに解説しておりますのでご参照ください。五十肩との一番の違いは拘縮の有無です。拘縮とは関節が堅くなって動きが悪くなることですが、力を抜いて他方の手で手伝っても動かないと言うのが拘縮です。腱板断裂も炎症が強いと拘縮を伴いますが、拘縮を伴わない場合はこの点が鑑別の一つになります。 |
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