腰痛と神経痛

(2)後方要素(椎間関節)などによる腰痛



  1. 筋筋膜性腰痛症
  2. 変形性脊椎症
  3. 腰部脊柱管狭窄症
  4. 椎間関節症
  5. 腰椎分離症
  6. 腰椎すべり症

  7. (以下は腰痛(1)を参照ください)
  8. ぎっくり腰
  9. 腰椎椎間板ヘルニア
  10. 椎間板症

  11. (以下は腰痛(3)を参照ください)
  12. 骨粗鬆症
  13. 化膿性脊椎炎
  14. 脊椎の腫瘍




 




ここでは主に腰を後ろにそらすと痛むが強くなることの多い、後方要素の障害によって起こる腰痛について解説します(簡易型コルセットの購入はこちら)


筋筋膜性腰痛症
脊椎の両側に傍脊柱筋と呼ばれる筋群があります。主に脊椎の指示を担っているものですが、これらの筋群に疲労を来すと腰痛の原因になります。肩こりと同様の機序です。後方要素ではありますがこれは後屈で痛みが増強するとは限りません。

本来腰椎には生理的前彎と言って、横から見ると少し前方凸にカーブしています。この腰椎の生理的前彎というものは四足歩行動物にはありません。4本足で歩いている状態では股関節は体幹(脊椎)に対して前方(下方)に伸びていますが、2本足で歩く場合、下肢は体幹に対してその延長線上にある必要があります。4足歩行の状態から2本足で立とうとすると股関節が完全に伸びきらない状態では、骨盤を傾け、腰椎を前方に突出させる(腰をそらす)事で後ろ足(下肢)を体幹に対して下方に向けることが可能となります。また、腰椎が骨盤の後方にあるため、骨盤を垂直にしてしまうと、重心は後方に偏ってしまいます。そのため、骨盤を傾け、重心を前方に持ってきてあるのです。こういった生物進化上、直立二足歩行に対して解決し切れていない構造上の問題点をはらんでいるため、ヒトに見られる腰椎の生理的前彎は生じたものと考えられます。すなわち、現代の人類が二本足で歩く以上、生理的前彎は構造上必要な物なのです。

脊椎の彎曲
(左)犬などの四足歩行動物(中)ゴリラなど(右)ヒト。
二足歩行に近づくにつれ、股関節が伸展するが、
生理的に完全伸展できないため、腰椎に生理的前彎が生じてくる。

腰椎の前方は腹筋と腰筋という筋群で、後方は傍脊柱筋群でバランスよく腰椎を前彎させて支えているのです。前屈みの姿勢や座位を長時間取っていると、この腰椎の前彎が減少した状態で体重を支える必要が出てきます。そうすると、後方の傍脊柱筋群が過剰に働く必要が出てくるのです。こうして、筋疲労が生じ、筋肉がこわばり、痛みを引き起こすのです。これが筋筋膜性腰痛と考えられます。筋肉に硬結を触れることもあり、筋肉に圧痛があります。

一旦症状が生じると肩こりと同様、筋のこわばりのための循環不良が生じ、痛みが起こる、痛みのために筋がこわばり・・・と言うふうに悪循環となります。これを痛みの悪循環と言います。鎮痛剤や理学療法でこの悪循環を断ち、原因となる動作を避けることが重要です。また、腹筋や腰筋など、前方の筋群の筋力低下が生じていることもあり、このような場合にはこれらの筋力訓練が再発予防に有効です。



変形性脊椎症
年齢とともに椎間板が変性し、クッションの役割を果たせなくなると、椎骨そのものが接触面積を増大させようとして形態変化を起こします。その結果、骨に色々な程度の出っ張りが生じます。これを骨棘(こつきょく)といい、この変化を生じた状態を「変形性脊椎症」と言います。骨棘は脊椎に限らず、骨が荷重を受ける部分に、荷重方向と垂直方向に発生します(代表的なものは膝の変形性関節症です)。ただ、骨棘の形成はある程度の年齢になれば症状のあるなしにかかわらず、ほぼ100%の確率で見られる変化(経年性変化と言います)であることには注意が必要です。ただでさえクッション性が悪く、動きがスムーズに行かなくなっているところに、骨棘が出来るとさらに動きが悪くなることがあります。また、骨棘が周辺の靭帯や神経を刺激して腰痛を生じることがあります。典型的には起床後に症状が強いことが多いようです。


腰部脊柱管狭窄症
特殊な状況を除き、基本的には高齢者の疾患です。症状的には椎間板ヘルニアと類似していることもありますが、正確に言うと椎間板ヘルニアではありません。椎間板ヘルニアは飛び出た椎間板が周辺の神経を刺激して痛みを引き起こすものですが、中高年になってくると、椎間板の強度そのものが弱くなり、それ自体が神経を強く圧迫するほどの力がなくなってきます。変わりに骨の形態変化を生じ始め、変形性脊椎症の状態になります。腰痛は伴わないこともあります。椎体の後ろには脊柱管と言って、足に行く神経が束になって通っているところがあります。椎体や椎間関節の骨棘や、周辺の靭帯の肥厚によってこの通路が狭くなります。そうなると神経が機械的に押さえ込まれたりして、神経が直接障害される、あるいは神経が血流不足になり、しびれや痛みを生じる、と言う状態になります。これが脊柱管狭窄というもので、通常は坐骨神経痛を来します。

典型的な腰部脊柱管狭窄の症状として、間歇性跛行と言うものがあります。これは普段は特に痛みはないが、一定の距離や時間を歩くと足がしびれだすと言うものです。脊柱管狭窄に特徴的な事として、足が痛くなってきたとき、しゃがんだり、座ったりして休むと速やかに足の痛みが取れるというものです。これは歩行時には背骨が伸びていますが、座ると背骨が少し前屈みになります。前屈みの姿勢では脊柱管が広くなり、神経の圧迫が開放されて速やかに症状が改善するというわけです。こういった人たちは腰をかがめた姿勢での運動、特に自転車などであれば幾ら続けていても足が痛くならないと言うのが特徴です。

類似の症状として、同様に歩行時に足がしびれ痛くなるのですが、前屈みですぐに改善しないと言う場合があります。これは通常、足の血流障害が主体であるとされ、閉塞性動脈硬化症などの疾患との鑑別になるとされています。脊柱管狭窄と合併していることも多く、同時に治療されることもあります。血流障害が主体の時には、脊柱管狭窄のように前屈姿勢や自転車運動では症状が出現しにくいと言う事はありません。痛みは下肢全体と言うよりもふくらはぎのあたりを中心としてた症状が強いことが多いようです。

中等度までなら内服や理学療法で対応できることがほとんどです。点滴注射やブロック注射で改善する場合もあります。コルセットで少し腰がかがむような姿勢に保持し、間歇性跛行を改善する方法もあります。症状が強く、これらの治療に反応しない場合には手術が選択されることがあります。



椎間関節症
症状的には変形性脊椎症と同じですが、症状の主体が椎間関節にあるであろうと診断される場合にこの病名がつきます。椎間関節とは椎骨の連結を後方でになっている関節で、通常の関節と同様、関節軟骨を有しています。膝などの関節軟骨が減るのと同様、椎間関節にも同じ変化が生じます。腰痛が主体ですが、骨棘が出来て、周辺の神経を刺激すると神経痛を引き起こします。

主な症状は腰痛ですが、おしりから太ももにかけて痛みが出ることがあります。ふくらはぎや足先まで症状が出ることは余りありません。変形性関節症と同様、主に動き始めに痛みが強く、スポーツ選手などの若年者に見られることもあります。

通常の腰痛と同じ治療を行います。椎間関節ブロックや傍脊柱筋への注射が有効なことがあります。



腰椎分離症
腰椎の後方要素の椎弓という部分の連続性が断たれてしまった状態です。スポーツ障害として現れることも多いので、詳細はこちらで説明しています。


腰椎すべり症
大きく変性すべりと分離すべりに分けられます。分離すべりは上記の分離症が進行した状態で、変性すべりとは分離のないすべり症のことを指します。ここでは変性すべりについて説明します(分離すべりについてはスポーツによる脊椎疾患を参照してください)。

ほとんどは前方すべりという、上位腰椎が下位腰椎に対して前方にずれるものです。椎間板の変性による症状が強いのですが、すべりが高度になると後方にある神経を圧迫し始めますので、神経痛が生じます。コルセットなどを併用して腰痛に準じた治療を行いますが、症状が強い場合には手術が選択されます。手術は固定術と言って、金属のネジなどを用いて、すべりをある程度戻した位置で固定し、それ以上の動きが出ないようにするものです。整復には通常、全身麻酔下でも完全に戻すことは出来ないことも多いので、皮膚の上からの処置でズレが戻ることは残念ながらありません。



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