肩周辺の痛み肩こり?それとも五十肩?肩周辺の痛みは色々な疾患が原因で痛みを起こす事があります。これらは整形外科疾患だけではなく、内臓疾患からくる事もあり、注意が必要です。ここではこれらの一般的な見分け方や特徴について述べます。 このあたりに痛みを起こすもっとも頻度の高い原因部位は肩関節、次は頚椎で、この両者で肩甲部の痛みの8,9割を占めると言われています。他には神経の痛みであったり、肺、心臓、大動脈などからも痛みを起こす事があります。 肩こりとは病名ではなく、一般的には肩甲骨周辺の痛みに筋肉のこわばりなどを伴うものを指します。原因としては頚椎由来の痛みである事が多いですが、はっきりとした病的原因のないものもあります。こういったタイプのものに病名をつけるとすると頚腕症候群とか頚肩腕症候群とか言われます。主には姿勢によるものがおおく、デスクワークやコンピュータ業務の方に多く見られます。同一姿勢を長時間することにより、筋疲労と筋のこわばりが生じ、局所の血流が悪くなり、疲労代謝が行われにくくなり、痛みが生じます。痛みを生じるとそれがこわばりの元となり、さらなる悪循環を引き起こす、と言われています。レントゲンでは典型的な所見はありませんが、頚椎の前彎の消失が見られる事が多いです。また、体格的にはなで肩の人にもよく見られ、このようなタイプでは肩すくめ運動などが効果的な事があります。 基本的にはほとんどの疾患で肩の運動によって痛みが再現できるか、腕が上がりきらないなど肩の動きに制限が出ています(可動域制限)。痛みの出現部位は肩そのものよりも腕の付け根外側に鈍痛として現れる事が多いです(図中1)。四十肩や五十肩では図中3の位置に痛みが出る事もよくあります。肩よりも頸側(肩甲骨の上や首筋)や肘よりも下に痛みが出る事もありますが、頻度は少ないです。また、就寝時、痛い方の肩を下にして寝ると痛くて眠りづらい、目が覚める、と言う症状が出る事がよくあります(夜間痛)。痛い方の肩を上にして寝たり、座ると痛みが改善されるのが特徴です。肩鎖関節症では挙上時と反対の肩に手をもっていったときに痛みが出ます(図中2) 肩の種々の疾患についての解説はこちら(整形外科一般:肩疾患)を参照してください。 頚椎の椎間板障害や関節症で痛みが出ます。痛みの出る場所は肩甲骨の上や内側(図中4や図中5)の部分である事が多いです。典型的には頸を動かすと痛みが誘発されます。逆に肩を動かしても痛みは生じない点で肩が原因である場合との鑑別になります。痛みやしびれが肘から下にまで広がる事もよくあります。指先にしびれを来すと神経症状を合併している事もあります。図中1の部分にも頚椎由来で神経痛を生じる事があります。神経痛性筋萎縮症と言って、急激に肩付近の痛みが生じた後、腕の筋力が落ちてしまう病態があります。これは主に脊髄の運動神経の領域(前角細胞)の障害で生じ、しびれを来す事は少ないので、肩疾患と区別の付きにくい事がありますが、三角筋や上腕二頭筋の筋力低下が見られる点で区別が付きます。 肩甲上神経という、主に棘上筋と棘下筋を支配している運動神経主体の神経があります。この神経は肩関節の関節包に知覚神経を出しており、この神経が障害されると棘上筋や棘下筋の萎縮とともに肩関節の鈍痛を生じます。肩甲骨関節窩付近の腫瘍やガングリオンで生じる事もありますし、バレーボールなどのスポーツ障害として出てくる事もあります。 内臓痛とか関連痛とか言われるものです。離れた部分の障害であるにもかかわらず、脳が痛みの局在を誤って認識する事です。一般的には鈍い痛みが多く、「ここが痛い」と言うふうに痛みの局在がはっきりしない事が多いです。また、頸や肩の動きに関係ない事が多く、押さえても痛くない(圧痛がない)事が多いのも特徴です。原因部位に何らかの随伴症状を伴っている事があり、手がかりになる事があります。有名なものに心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患で起きるものが知られています。典型的には左の腋の下や腕の内側(腋のすぐ下)などに痛みが生じる事が多いですが、図中に示した部位や右側に生じる事もあります。大動脈疾患では頚部に痛みが放散する事があります。肺ガンが肺尖部と言って肺の上の方に出来ると腕に行く神経が刺激され、肩や上肢に痛みを起こす事があります。他に横隔膜疾患では肩甲骨上部、胆嚢疾患で右上腕部、食堂疾患で左鎖骨部や左腋窩部に痛みが出る事もあるとされます。 |