子供の腰痛子供の腰痛には注意腰痛(筋筋膜性腰痛)の項目でも説明していますが、腰痛というのは、人が2本足で歩くことと引き替えに背負った宿命のようなものです。2本足で立ち上がってしまったが故に上半身の体重を細い脊椎で支え、その柔軟性を保つために、椎間板が常に可動性と荷重のストレスにさらされているのです。そこで、椎間板に変性という構造上の傷が生じ、痛みを引き起こすのです。では、子供の場合はどうなのでしょうか?形態的に異常がない限り、子供には変性という状態はほとんど見られません(椎間板は10歳代でも変性が見られることはありますが)。成人にみられる腰痛の原因のほとんどが変性由来のものであると言うことを逆に言うと、変性のない子供に腰痛は起こりにくいはずなのです。ですから、子供に腰痛が見られた場合には大人の腰痛とは違い、何かしらのはっきりとした異常がある確率が成人よりも高いのです。それ故、子供の腰痛を診る場合には注意が必要です。 スポーツを行っていると、様々な原因で腰痛を引き起こすことがあります。代表は筋筋膜性腰痛というもので、筋疲労が主な原因です。また、思春期頃に腰をそらすと痛みが強くなる場合には腰椎分離症を疑う必要があります。分離症の初期はレントゲンでも分からないことも多く、通常の腰痛との区別も付きにくいので、慎重に経過を見ていく必要があります。 反対に前屈みになると痛みが強くなるものとして、椎間板ヘルニアがあります。小児の椎間板ヘルニアでは、成人のように坐骨神経痛や神経麻痺、しびれといった症状は出にくく、体の硬さとして出現することがあります。治療法は成人の場合に準拠しますが、痛みが強いと手術が選択されることもあります。椎間板ヘルニアと同様の症状を来すもので小児期に特徴的な病態として、隅角解離(separation of ring apophysis)というものがあります。これは椎体の成長軟骨の損傷で、レントゲンで分かることもあります。ヘルニアと違い、ずれた骨片が神経を圧迫してしまうことが多いため、手術治療が必要になることが多いです。 成長期に見られる腰痛の原因として多いものに、タイトネス(筋肉の柔軟性不足)によるものがあります。 主にはハムストリングと言って、太ももの裏側にある、主に膝を曲げるときに使う筋肉が硬くなっている状態です。成長期に見られるタイトネスの主な原因は筋肉の長さが骨の長さの成長について行っていないためです。ハムストリングの柔軟性が落ちると、付着部である坐骨が下方に引っ張られるために、骨盤が後ろに引っ張られ、結果として腰椎の前彎が減少します(右図)。そうすると、前屈姿勢となり、傍脊柱筋に過度の負担がかかり腰痛を引き起こします。また、特にスポーツをしている子供にみられる腰痛のほとんどにはハムストリングタイトネスがあります。これをストレッチで改善してやると多くは腰痛も改善していきます。 ただ、他の疾患があってもハムストリングタイトネスが出現する場合があり注意が必要です。代表は前述の椎間板ヘルニアです。また、脊髄係留症候群と言って、脊髄神経の異常がある場合や、腰椎レベルの脊髄(馬尾神経)に腫瘍(多くは脂肪腫)がある場合にも同様の症状が見られます。多くはMRI検査で判明します。 脊椎に腫瘍が出来ることは比較的まれですが、類骨骨腫と言われるものや、この類似で骨芽細胞腫と呼ばれる良性腫瘍は脊椎に出来ることがあります。これは10歳以降に多いものですが、非常に強い痛み、特に夜間に強い痛みを生じます。通常のレントゲンでは見つからないことも多いので、このような場合には精密検査が必要です。 ちなみに、思春期に見られる脊椎疾患の一つに側彎症(特に女子)がありますが、一般的には側彎症は腰痛の原因とはならないと言われています。側彎のある人とない人での腰痛の頻度に差はない、と言うものです。側彎症に合併して腰痛がある場合、側彎が原因と考えるのではなく、他に腰痛の原因となるものがないかどうかを調べる必要があります。
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