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肩関節のスポーツ障害

筋肉のバランスが重要

肩関節は他の項目(「肩関節」、「脱臼・肩関節」、「反復性肩関節脱臼」)でも述べているように構造上は非常に安定性の悪い関節です。そのため、日常生活では特に支障を来さなくても、投球動作など、肩関節に過度の負担がかかるスポーツでは障害が出てくることがあります。過去に脱臼経験がある場合はもちろんのこと、不適切な筋トレなどで肩の筋力のバランス不良が起こったりしているこのような障害を来しやすくなります。以下に主要なものを挙げてみます。
外傷は主に鎖骨骨折、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼がほとんどです。これらは鎖骨骨折脱臼のFAQでも説明していますので、参照してください。少年野球肩(リトルリーグショルダー)は別項で説明してます。

ベネット骨棘

ベネット骨棘投球による肩の障害の一つとして、肩甲骨関節窩の下方後方よりの部分に骨棘と言って骨の出っ張りが出来る事があります。これを命名者の名前にちなんでベネット骨棘(ベネット病変)といいます。野球選手の多くに見られ、無症状の事もあるとされます。主に投球時の肩後方の傷みとして症状が出ます。局所に注射する事で改善する事が多いですが、手術的に切除するという人もいます。

上腕二頭筋長頭腱炎

肩関節上腕二頭筋の長頭腱という腱が肩関節近傍を走行しています。肩関節近くでは結節間溝と言って、骨の溝があり、その間を通っています。そこを抜けると約90度向きを変えて肩甲骨関節窩に向かいます。そのため、骨との間に刺激が生じやすく、炎症を起こすとされています。症状は肩の運動時痛で、主には前方に痛みが生じますが、腱板損傷やSLAP損傷でも同様の症状を来すことがあり、鑑別が必要です。結節間溝に圧痛があることが多いです。手術治療が必要になることは余りありません。


関節唇損傷

関節唇とは、関節窩の周りに関節面の縁取りをしているような形の軟骨の一種です。骨頭が脱臼するのを防ぐ、車止めの役割を持っていると言われています。繰り返しの投球動作で関節に無理な力がかかり、関節がずれようとします。この繰り返しによって、関節にゆるみが生じ、関節唇に負担がかかり、傷んできます。ですから、これは原因ではなく、結果であるという見方もあります。亜脱臼などの外傷で生じることもあります。治療は手術的に関節唇を修復する事もありますが、結果である事もあるので、肩関節のストレッチや筋力訓練(inner muscleと呼ばれる、腱板筋群の強化、バランシング)など、不安定性を来す原因を解明し、それを取り除く事が重要です。主に投球動作による障害です。

腱板炎・腱板断裂

インピンジメント症候群として話題になった事があります(下記参照)。これも肩関節の安定性が悪いために起こる、二次的なものであろうという見方が主流です。関節唇損傷と同様、腱板筋群の強化とバランシングが重要です。一旦部分断裂以上の損傷を来した腱板は自然には修復されません。そうなるまでの時期にしっかりと原因を除去し、治療することが大切です。野球などの投球動作を行うスポーツの他、バレーのアタック、テニスのサーブや水泳でも見られることがあります。症状は主に挙上時の痛みです。断裂を起こしてしまった場合、手術治療が必要な事がありますが、スポーツ選手に対する手術成績は決していいものではありません。予防が大切です。(腱板断裂の項目も参照してください。)

  • インピンジメント症候群
  • インピンジとは「衝突する」という意味です。数十年前にアメリカのNeerと言う人が提唱した概念で、肩の診断治療の大きな進歩を遂げるきっかけとなった概念です。腱板は上腕骨頭と肩峰という肩甲骨の突起部の間に存在し、肩の挙上時に腱板は肩峰の下面を滑るように動きます。この時、上腕骨頭と肩峰との間で腱板が挟まれるために腱板が損傷され、浮腫、炎症、部分断裂、完全断裂というふうに段階的に病状が進行していくと言う考え方です。現在ではインピンジメントは原因ではなく、結果であるとする見方が主流です。主には慢性疲労や筋力のアンバランスのためにインピンジメントが生じると考えられています。最近、インターナルインピンジメントとか、烏口下インピンジメントと言った概念も提唱されています。

亜脱臼障害

脱臼の項目でも述べたように、亜脱臼とは脱臼に至らないが、関節の適合がなくなった状態です。肩関節の場合、元々骨の適合が少ないために、亜脱臼状態ではすぐに整復される事があります。自分で動かしているうちに整復される事もあれば、脱臼感を感じる暇もなく自然に整復される事もあります。前者は反復性肩関節脱臼の人に時々見られる状態です。また、後方亜脱臼と言って、腕を前に挙げたまま、内側にねじるようにする(屈曲内旋)と後方に脱臼するというものがあります。これも姿勢を戻せばすぐに整復されます。脱臼感を感じる暇もなく自然整復されると、自覚的には捻挫のような状態なのに、ひどく肩が痛んで腕が上げられない、麻痺したようになると言うような症状が出る事があります。これを”dead arm syndrome(デッドアーム症候群)”と言います。このような状態になると、関節唇損傷などが起こっている事があり、痛みが続くなら精密検査が必要です。

  • デッドアーム症候群(Dead arm syndrome)
  • これは肩関節が脱臼しそうになったとき(亜脱臼)によく起こるもので、典型的にはダイビングキャッチや「肩をもって行かれた」と言うような動作の後、痛みやだるさのため、肩がうまく挙上出来なくなってしまう状態のことです。まるで腕が一本麻痺したかのような状態になるため、このような名前が付けられています。
    脱臼ほどの痛みはなく、様子を見られることが多いのですが、通常、2,3日もあれば肩の動きは正常に近くなってきます。しかし、投球などの負荷がかかると痛みが生じ、スポーツ活動に制限を来します。
    病態は亜脱臼なので、関節唇損傷を伴っていることも多く、精密検査や場合によっては関節鏡が必要になることもあります。
    2006年12月、全日本フィギュアで安藤美姫選手が肩を傷めておりましたが、あれがまさしくデッドアーム症候群であると考えられます。もともと求心力の崩れている肩関節にスピンでの遠心力がかかったために亜脱臼を生じたものと思われます。

SLAP(スラップ)損傷(上方関節唇・二頭筋長頭腱障害)

これは比較的新しい概念で、1990年代に有名になったものです。関節鏡が普及して初めて確認された概念です。専門的にはSLAPの語源は「Superior Lablum lesion Anterior and Posterior」の頭文字をとってつけてあります。訳すると、「前方から後方にかけての上方関節唇損傷}と言う意味です。
上腕二頭筋長頭腱という腱が関節内を走行しており、肩甲骨関節窩の上部の関節唇と付着しています。この部分が投球などのストレスによって引っ張られ、関節唇とともに骨からはがれてしまう病態です。肩の痛みやクリックが生じます。診断は各種誘発テストやMRIなどの画像検査も提唱されていますが、正確な診断は困難なことが多く、関節鏡による確認が必要になることがあります。治療は原則的に関節鏡で行います。切除や修復など、傷み方によって治療方針は変わってきます。

参考図書:Rockwood and Matsen : The Shoulder


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