子供の肘骨折頻度が高い割に、医師の苦手な部位(総論)子供の骨折は大人とは違った考え方で診断、治療に当たる必要があります(子供の骨折参照)。中でも、子供の骨折では、肘関節周辺はもっとも頻度の高い部分の一つです。しかし、肘関節には「小児期には軟骨成分が多く、レントゲンに写らない部分があるため、骨折の判定がしづらい」「成長過程で色々な部分に新たな骨化が出現し、正常レントゲン像すら判定が困難なことがある」「子供によく見られる骨の自家矯正能力が肘関節周辺部では少ない」、などの特徴があるため、診断、治療が困難なことの多い部分でもあります。また、関節内骨折となることもあるので、厳密な治療が必要になることもあるため、手術治療を要することも多くあります。子供の場合、基本的には全身麻酔での手術となります。手術治療が適切に行われていても、場合によっては後遺障害を残すこともあり、非常にやっかいな部分でもあります。一般の方には多少難しいかも知れませんが、参考になれば幸いです。軽微な外傷の後に腫れもないが、肘を痛がって手を使わなくなる、という状態は肘内障であることが多いです。
まず、正常な骨の発達から見てみます。0歳児と成人では右図のように大きく形態が異なります。これは成長軟骨がレントゲンに写らないためです。成長軟骨は通常、骨化核といって、骨の固まりが軟骨の中に出来てきます。骨化核は1つのこともあれば、複数存在することもあります。肘は複数出現する部分で、それも時期を異ならせて出現するので、レントゲン像が複雑になります。 骨化核の出現は、最初に外顆核(上腕骨小頭)が2,3歳頃に出現し、次に4,5歳頃に内上顆核が出現します。このころに橈骨頭の核も出現します。その後、肘頭の核が出現し、8歳頃に滑車の核が出現します。滑車核は通常、複数に分裂していますので、注意が必要です。その後、10歳頃になると、外顆核と上腕骨の骨端線が狭くなり始めます。このころに外上顆核が出現します。外上顆核は半年ほどで外顆核と癒合し、その後速やかに上腕骨とも癒合するので、短期間しか出現しません。外顆と外上顆を混同している人をよく見かけますが、後に述べるように、治療方針は全く異なりますので、しっかりと区別する必要があります。これとほぼ同時期に、外顆核と滑車核も癒合し、内上顆核も癒合し、上腕骨側の成長終了となります。肘頭の成長軟骨の離開は小児期の後方型野球肘としてみられることがあります。このように、子供の肘関節のレントゲン像は年単位で変化していきます。そのため、正確な2方向撮影(必要時は4方向)と健側との比較が不可欠です。
子供の肘の骨折形態は解剖学的形態によって幾通りかに分けられます。次のページで、それぞれの骨折について述べていきます。 |
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